1988年講談社
言わずと知れた本格推理小説の大御所の若き日(20代)の代表作の一つ。
ギリシア神話に材を取った迷路入り組む館で起こる連続殺人、どんでん返しに次ぐどんでん返し、作中作という奇抜な構成・・・。工夫に工夫を凝らし、読者を欺き驚かそうと試みる、当時「ミステリー界に新風を巻き起こした」と評された著者の若い息吹が感じられる。
タイトルや舞台設定から、迷路そのものが真犯人探しの鍵を握るような内容ではないかと期待したのだが、そうではなかった。たしかに迷路の構造が殺しのトリックの一環として利用されてはいるが、それだけで終わってしまったのは勿体ない気がした。迷路の有効利用が欲しかった。
そして、迷宮や密室を無下にするかのような秘密の通路の存在も残念。
せっかく完成させた迷路館のクローズド・サークルが根底から崩れ、「秘密の通路を用いて最初から内外出入り自由であった」という可能性をも許してしまう。そうなったらなんでもありだ。真犯人を内部の人間に限定する必然性もなくなる。
登場人物の一人の属性を誤認させる騙しのトリック(叙述トリック)は許容できても、秘密の通路はやはり興ざめである。(冒険ミステリーやスリラーなら良いのだが)
また、6人の人間を残酷な手段で殺した真犯人の罪が暴かれず、捕まらないまま終わってしまう結末もいただけない。障害を持つ息子のためとはいえ、さすがに真犯人に同情すべき余地はない。探偵・島田潔には道義心というものがないのか?
力作であるのは確かだが、「見事騙してくれてありがとう!」のスッキリ感はない。
評価:★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
