2018年アメリカ、ドイツ、イギリス
100分

 未来社会を描いた SF 映画。
 タイトルの ANON は「匿名」(UN KNOWN の読みか?)の意。

 ニコル監督は『ガタカ』 (1997)、『トゥルーマン・ショー』 (1998) などで知られ、SFや戦争ドラマを得意とする人である。どうやら風変わりな設定の中での人間存在を描くことに惹かれているようだ。
 この作品も設定が凝っている。
 
 人々の記憶(視覚)がすべてデータ化され、ファイルのように保存・呼び出し・閲覧(再生)・送受信・変更・削除できる未来社会が舞台となる。
 たとえば、夫の浮気を疑った妻が、夫に「会社から帰宅するまでの記憶を見せて」と言われたら、夫は自身の保存ディスク(脳に埋蔵?)から該当するファイルを検索・呼び出し・送信し、妻に映像として示さなければならない。公明正大でなければやっていけない。
 他人の記憶を勝手に覗き込むことや、自分の記憶であっても勝手に変更・削除することは許されない。それができるのは警察など一部の特権階級――そしてハッカーだけである。

 ――という設定において、一人の男性警察官(=クライヴ・オーウェン)と女性ハッカー(=アマンダ・サイフリッド)との攻防が繰り広げられる。

監視社会

 
 設定は興味深いが、この「記憶データ化社会」のシステムやルールを視聴者に理解させる手続きがいっさいないので、難解な感じを受ける。(上記のソルティ解読による説明も全然違っているかもしれない。) 不親切というか、「 IT 時代の今どき、これくらい説明なしでも理解できるだろう?」といった制作者の傲りを感じてしまう。
 そのわりには、テーマ自体は「監視社会におけるプライバシーを問う」といった(大切ではあるが)凡庸なものなので、これだけの設定を用意してオチはそれだけ?――といった肩透かし感が残る。

 設定の奇抜さを楽しむだけの映画と言える。


評価:★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損