2013年イースト・プレス

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 人気漫画家の失踪体験を描いたノンフィクションとして話題を集めた『失踪日記』(2005年イースト・プレス)の続編。
 吾妻は警察につかまって2度目の失踪が終了した後、アルコール依存の治療のため都内のアルコール依存症病棟に約3ヶ月間入院していた。その治療生活を描いたものである。
 ソルティは、『失踪日記』は読んでいた。

 アル中病棟での生活風景、服薬や仲間とのミーティングなどの治療の様子、集団生活しているアル中の人々の超個性的キャラがよく伝わってくる。アル中一般について知りたい人はもちろんのこと、一般読者が読んでも楽しめる漫画となっている。
 やはり、吾妻ひでおの絵の上手さと魅力はずば抜けている。大勢のキャラを描き分ける技術がすごい。女のキャラを可愛く色っぽく描く技量はロリコン漫画ブームの火付け役として当然としても、男のキャラもまた色気を感じさせて描ける人である。そこが素人とは一線を画すオーラある紙面を生む秘訣かなと思った。

 それにしても、吾妻ひでおは才能があり、成功体験もあり、人気もあり、お金を稼ぐ力もあり、治療をサポートしてくれる家族もあり、友人や仲間もたくさんいて、何不自由ない、なんら不足ない境遇に思える。それでもアル中になってしまうのだから、依存症って根深い。
  いや、彼の場合、そうした精神の脆弱性こそが芸術的創造性の源なのだろうか。

 

評価:★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損