2014年スペイン
127分

 ファンシーなタイトルとDVDパッケージを飾る可愛らしい魔女っ子コスチュームの少女の写真から、ファンタジー風ミステリーを想像していたら、とんだ勘違いであった。
 白血病で余命わずかな12歳の少女と、娘の希望を叶えてやりたい貧乏な父親との心温まる、しかしラストには号泣必死のファミリードラマかと思っていたら、これまたとんだ見当違いであった。
 スペイン発信のフィルム・ノワール、いわゆる犯罪映画である。
 
 スペイン映画というのはやはり癖がある。アメリカ映画とも、同じヨーロッパ圏のイタリア、フランス、イギリス、スイス、スウェーデンの映画とも一線を画すエグ味がある。
 それは「血と砂」で構成されるエグ味、身を亡ぼすほどのパッションと野蛮すれすれの土俗性との結合である。闘牛やフラメンコやスペイン産赤ワインの味わいである。
 同じラテン民族であるフランスやイタリアの洗練とくらべると、不思議なほどの土俗性——哀しみと怒りを秘めた土俗性が感じられる。アジアで言えば、韓国映画に近いかもしれない。

 もっとも、ソルティがこれまでに観たスペイン映画は、日本で公開された 
 『ミツバチのささやき』(1972)のビクトル・エリセ、
 『赤ちゃん戦争』(1973)のマヌエル・スメルス、
 『ザ・チャイルド』(1976) のナルシソ・イバニェス・セラドール、
 『欲望のあいまいな対象』(1977)のルイス・ブニュエル、
 『カルメン』(1983)のカルロス・サウラ、
 『蝶の舌』(1999)のホセ・ルイス・クエルダ、
 『デビルズ・バックボーン』(2001)のギレルモ・デル・トロ
 『アザーズ』(2001)のアレハンドロ・アメナーバル
 『トーク・トゥ・ハー』(2002) ペドロ・アルモドバル
 『ダークネス』2002)ジャウマ・バラゲロ
 『永遠のこどもたち』(2007)のJ・A・バヨナ
 くらいに限られるのだが。十分か・・・。

 『カルメン』のストーリーを想起すれば分かりやすいのだが、愛と死とが紙一重に——あるいは闘牛士の持つ赤布(ムレータ)一枚に——存在するところに、スペイン映画の魅力があるように思う。その曖昧さを許さない接近が悲劇にもなり、ブラックジョークにもなる。

 カルロス・ベルムト監督は親日家なのだろうか。映画の中で、長山洋子のデビュー曲『春はSA・RA・SA・RA』が使われ、ラストクレジットのBGMにも日本語の歌が流れている。
  
闘牛


評価:★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損