2014年アルゼンチン、スペイン
122分

 怒りと暴力と復讐を共通テーマにした6つの短編からなるオムニバス映画。アカデミー外国語映画賞にノミネートされるなど評判が高い。
 現代社会の中で人が遭遇する怒りや恨みや恐れを引き出すシチュエーションが誇張的に描き出されているので、「うん、わかるわかる」と共感を呼ぶ。どの短編も面白い。
  1. おかえし ・・・搭乗した飛行機内のすべての乗客が、ある一人の青年とつながりを持っていた。いったい、なにが起こっているのか? 
  2. 料理人 ・・・勤めているレストランにやって来た客は、過去に家族を崩壊させた地上げ屋だった。食事に毒を盛れとしきりにすすめる同僚。
  3. パンク ・・・あおり運転がきっかけで起きた田舎道での喧嘩がヒートアップした行く先は?
  4. ヒーローになるために ・・・駐車違反のレッカー移動を4回もされ、職も家族も失い、キレた男がとった報復とは?
  5. 愚息 ・・・妊婦を轢き逃げした一人息子を守るため、弁護士や検事を金で買収し、代理の犯人を仕立て上げる父親の苦労。
  6. Happy Wedding ・・・結婚式の最中に花婿の浮気を知った花嫁がキレまくって大騒動を巻き起こす。血まみれの壮絶ウェディングの果てに招待客が見たものは…?

 ミステリータッチあり、スプラッタあり、バトルアクションあり、大爆発あり、犯罪サスペンスあり、恋愛ホラー(?)あり。一作ごとに趣向が異なって122分飽きることなかった。怒りと暴力の物語の連打で知らずたまった観る者のストレスが、6作目のラストシーンで一挙に解放される構成も秀逸。

 アメリカ映画『クラッシュ』(2004)で描かれたように、人と人とが裸の心で向き合い強いつながりを見いだせるのは、怒りと暴力の現場である――という現代の人間関係の不毛を風刺しているかのような快作である。 


評価:★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損