2017年イスラエル、ドイツ、フランス、スイス
112分
ヘブライ語

 サミュエル・マオズ(1962年 - )はイスラエルの映画監督。
 2009年のデビュー作『レバノン』でいきなり第66回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を受賞した天才である。本作は長編2作目。

 じっくり丁寧に撮られた映画である。おそらく8割の人は途中で退屈に襲われて眠くなることだろう。イスラエル国防軍の若い兵士4人が、国境近くの寂しい検問所で無為の時を過ごす、間延びした、しかし美しいシーンで。
 しかるに、この“間延び感”があとから効いてくる。
 
 突然の息子の戦死の知らせに慟哭する夫婦。
 だが、それは誤報で同姓同名の別人であった。
 軍の対応に怒り狂った夫は、家人の止めるのも聞かず、息子を家に戻すようごり押しする。
 だが、それが裏目に出てしまう。
 検問所での任を解かれて一時帰宅を命じられた息子は、その帰り道で事故に遭う。

 原題「フォックストロット」は、1910年代はじめにアメリカで流行した社交ダンス。前に2歩、右へ1歩、後ろに2歩、左へ1歩――というステップを踏んでスタート地点に戻って来る。
 この映画の最初に呈示されるフランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌ(1621-1695)の次の格言同様、人があらがうことのできない運命の力の比喩である。
 
 人は運命を避けようとしてとった道で
 しばしば運命に出会う

 
 ちなみに、「すべての道はローマへ通ず」はフォンテーヌのもっとも有名な格言である。
 
 運命とは何なのか?
 それは残酷なのか。
 それとも優しいのか。
 人は自らの運命を知り得るのか。
 そして、それを変えられるのか。
 
 神の真意は測り知れない
 この映画は一種のスピリチュアルミステリーである。
 深い・・・・
 
 
許し


評価:★★★ 

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損