1962年大映
99分

 泉鏡花原作、「おんなけいず」と読む。
 新派の代表的演目の一つである。
 
 元は掏りの小僧だった書生早瀬主税(=市川雷蔵)と芸者お蔦(=万里昌代)の結ばれない恋を描く悲劇である。
 掏りから足を洗わせてくれた恩人酒井俊蔵(=千田是也)の厳命により、お蔦と別れることを選ばざるをえない主税。
 白梅咲く湯島天神でお蔦に別れを告げる。
 ここ一番の名場面である。

主税 「俺があやまる。頭を下げる」
お蔦 「切れるの、別れるのなんて、そんなこと・・・芸者の時に言うものよ。あたしには、死ねと言ってください」

湯島天神


 この有名なセリフ、原作にはない。
 新派で舞台化されたときに加えられたらしい。

 二人の味方となる生きのいい魚屋を演じる船越英二もなかなかいい味出しているが、この映画の陰の主役は、お蔦の姉芸者小芳を演じる木暮実千代である。
 年増芸者の婀娜っぽい魅力のかげに、客との間にできた娘を手放さざるをえなかった母親の哀しみや苦しみを醸して見事。
 バイプレイヤーとしての木暮実千代は、出演作を追う十分な価値がある。
 
 
 
評価:★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損