2013年かもがわ出版

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 発達障害(自閉症)のこどもの育児日記は、昨今珍しくない。
 漫画に限っても、戸部けいこの『光とともに』という名作がある。

 この漫画のユニークにして特筆すべきは、母親である山口かこが、障害児を持つ母親として優等生でも模範生でもないところである。

 娘のたからちゃんが2歳のときに広汎性発達障害の診断を受けてから数年間、死に物狂いで育ててきたものの、ついには心身ともに疲れ果ててしまう。
 家事も育児も投げ出して、チャットにはまり、あやしい宗教にかぶれ、妻子ある男と不倫し、ついには(というか案の定)夫と離婚、たからちゃんは夫の実家に引き取られることになる。
 はたから見たら、「ひどい母親」「ひどい妻」である。(にしかわたくの可愛らしい画風により緩和されているが)


 「自分のことしか考えていない」って!?
 うるさい!!
 発達障害さえなけりゃ、私だっていいお母さんになってたよ!!

 「世の中にはもっと重い障害や病気の子どもを持つお母さんもいる」って!?
 
 うるさい!!
 うるさい!!


 私は“普通の家族”が欲しかったんだ!!


 山口を非難するのは簡単であろうが、誰にだって限界がある。
 その限界を超えて頑張った挙句バーンアウトし、虐待に走ったり、母子心中をはかったりするくらいなら、「私にはこれ以上できない」と素直に認めて、周囲に頼るほうが賢明である。

 幸い、たからちゃんは別れた夫の実家で愛情を注がれてすくすくと育ち、愛らしい落ち着きある娘に育ったようだ。
 自閉症の人の特徴の一つとされるコミュニケーション障害も改善しているらしい。


 作中で紹介されているジム・シンクレアという名の自閉症当事者が書いた手紙の一節が心を打つ。

 「うちの子が自閉症でなければよかった」
 「この子の自閉症が良くなりますように」


 その嘆き、その祈りは、私にはこう聞こえます。


 「自閉症ではない別の子がよかった」


 両親が語りかける夢や希望に
 私たち自閉症者は思い知るのです。


 彼らの一番の願いは
 私の人格が消えてなくなり
 もっと愛せる別の子が
 私の顔だけを引き継いでくれることなのだと・・・


 「普通」という幻想は、いかに我々を強く縛りつけ、苦しめるものか!
 これは、たとえばLGBTの子どもを疎んじる親にも言えることである。

 




評価:★★★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損