2018年イタリア、アメリカ合作
152分


1977年制作のダリオ・アルジェント監督の伝説的オカルトホラーを、『君の名前で僕を呼んで』のルカ・グァダニーノ監督がリメイク。
1970年代東西分断下のベルリンを舞台に世界的バレエ団の秘密を描く。

オカルト映画で152分?
――という当然の疑問がまず浮かぶ。
アルジェントの旧作は99分、物語構成がしっかりしていて結構長い『エクソシスト』だって122分である。
歴史ドラマならともかく、ちょっと長すぎやしないか?
「退屈」という二文字が頭をよぎる。


出だしはいかにもホラーらしい。
有能な精神科医のもとに美少女が突然やって来て、わけのわからないことを狂った様子でわめき散らす。
有名なバレエ団のメンバーらしい。
つかみはバッチリだ。

30分経過したところで、「もしかしたら、だまされたかも?」と不安がよぎる。
オカルトホラーのふりした政治映画、反体制の地下組織の暗躍を描いたプロテスト映画のような匂いが漂ってくる。
(観るのやめようか・・・)

我慢して40分経ったところで、やっと第一の犠牲者。
いきなりの残虐とグロテスクとスプラッタに衝撃が走る。
痛い!

90分経ったところで、「やっぱりだまされたか」と苛立ちが起こる。
発表会を前にしたバレエ団の練習風景が延々と描かれる。
あと1時間、この調子で続くのか。
観るのやめようか・・・。
STOPボタンに手が伸びかける。

1時間45分
いよいよ少女たちによる舞踏劇『民族』が披露される。
客席にはくだんの精神科医の姿もある。
ここからラストまで、もう目が離せない。
少女たちのダンスのド迫力、ほとばしるエロチシズム、振り付けとコスチュームと音楽の異様さ。
画面全体を覆う禍々しさは、ホラーとは別の意味で不気味さ全開である。
いったい、これは何なのだろう?

2時間経過。
ついにオカルトホラーの本領発揮である。
真の恐怖、真の背徳、真の地獄絵図。
グロテスクで、デカダンスで、デモニッシュ。
なのに、どこかパセティック。
なぜバレエ団か、なぜダンスか、その意味がここで明らかにされる。

ゲイ少年の甘酸っぱいラブストーリーを撮ったのと同じ監督の手によるものとは到底思われない。
監督に何かが取り憑いたとしか思えない尋常の無さ。
ある意味、すでに伝説の域に達している。

観た夜は、悪夢にうなされた。
マジで。

五芒星



評価: 不能

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損