2008年原著刊行
2009年二見書房より邦訳発行
2015年文庫化

小池アミイゴのイラスト、ヤマシタツトムのデザインによるウキウキするような楽しい表紙に惹かれて手に取った。

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フランスでベストセラーになったスピリチュアル本。
著者のローラン・グネルは自己啓発の専門家である。

人生に不全感をかかえる青年教師が、休暇旅行先のバリ島で一人の老治療師と出会い、何度かにわたる対話によって自らを束縛していたいろいろな思い込みに気づき、自由と勇気を手に入れていく過程を描いている。
呪術師ドン・ファンの教えによって新たな世界観に触れて盲を開いていくカルロス・カスタネダの古典的著作を挙げるまでもなく、老賢者との邂逅と再生という物語装置はスピリチュアル業界(あるいは求道業界)の定番である。

中心テーマは、人がいかに「思い込み」に支配されて生きているか、それによっていかに自分自身に制限を設けてしまっているか。
「思い込み」とはすなわち自我である。
賢者の話は、非常にわかりやすく、様々な身の回りの事例や、人を対象にした心理実験(たとえばプラシーボ効果)のエビデンスなども取り上げられているので、説得力がある。
通勤途中にさっと読める手頃さだが、内容はそれなりに深い。

いいですか、あなたは今晩死んでしまうとしましょう。そしてそのことをあなたは一週間前に知ったとします。この一週間にやったことのなかで、もうすぐ死ぬとわかっていてもやっただろうと思うことは何ですか。

賢者の問いかけに、ソルティも思わず、この一週間を振り返った。
少なくとも、3つはあった。
仕事と、家族と過ごす時間と、瞑想と。



評価:★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損