1987年東宝、フジテレビジョン
121分

公開当時に劇場で観た時のことをよく覚えている。
とにもかくにも、

沢口靖子がきれいかった!

この映画が全米で公開された時、ゲストにしてホステス役の沢口が作中と同じ十二単姿で劇場入口に立っていたら、「よくできたお人形さん」と思って傍らを通ったアメリカの観客たちは、急に人形が動き出したので腰を抜かした――というエピソードがあったのを覚えている。
大袈裟ではない。
かぐや姫に扮した沢口は、月の世界から来た異星人という正体が十分頷ける、人間離れした美しさに光り輝いている。
現在、『科捜研の女』で人気沸騰の沢口である。
テレビ画面で見る50代の彼女は、相変わらず美人で凛として若々しい。
が、彼女の最も美しい「時」を遺した記念碑的作品はこの『竹取物語』であろう。

当時は沢口靖子しか目に入らなかったけれど、いま見直してみると豪華キャストに驚かされる。
竹取の翁に三船敏郎、妻に若尾文子である。
どちらもさすが上手い。
若尾は若さでこそ沢口に負けているが、気品と演技力とでは格段勝る。
金田一耕助とは逆位置の石坂浩二の帝、六条御息所のような岸田今日子の皇后、道鏡のような伊東四朗の僧都、それに市川作品と言えばこの人、「よし、わかった!」の加藤武のヒゲ武将。それぞれ、達者な演技と風格で古典物語の格調を守っている。
衣装デザインはワダエミ。平安貴族たちの目も彩なる豪奢な衣装は、まさにカラー映画ならではの眼福である。

BGMに使われているのは、1986年ニッカウヰスキーCMでソプラノ歌手キャスリーン・バトルが歌い大ヒットしたオンブラ・マイ・フ
UFOとかぐや姫の組み合わせ以上にユニークなのは、ヘンデル作曲の自然を讃える名アリアと日本最古の物語の組み合わせである。(80年代当時、こうした異質なものを掛け合わせて意外な相乗効果を楽しむキッチュ感覚が流行っていたのだ)

当時(古代)の日本に生えていたのは、現在メジャーな孟宗竹ではなく、真竹であった。
真竹林の美しいこと!

DVDに入っているメイキングも面白い。(案内役で出てくる靖子がこれまた美しいこと!)


竹林
これは孟宗竹か



評価:★★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損