この病院のリハビリは充実している。 
 ソルティを担当してくれる青年スタッフの話によると、現在80名近いリハビリ職員が働いていて、来年度の入職予定者は25名だという。
 大企業か!

 リハビリ室は非常に広く、外光をいっぱい取り込んで明るい。
 いつ行っても、たくさんの高齢患者たちが、孫あるいはひ孫ほど年の離れた若いスタッフたちと共に、リハビリに取り込んでいる。
 そう。スタッフの若さには特筆すべきものがある。
 おそらく、平均年齢は35才を切るんじゃないか。

 この若さの秘密は、理学療法士や作業療法士といったリハビリ職が、医療介護の現場で脚光を浴び、働き口が増えるようになってから、まだ日が浅いためにあると思われる。
 また、リハビリ職は介護職と比べると資格を取るためのハードルが高いので、介護職には多く見られる中高年転職組の少ないこともあろう。
 ソルティが前に勤めた施設でも、介護職や看護職に比べると、リハビリ職員の平均年齢は低かった。

 この若さというのが馬鹿にならない。

 病棟より明らかに寒く、だだっ広いリハビリ室で、揃いのオレンジ色の半袖ユニフォームを着て、きびきびと動き回る若いスタッフたちの発散する生気は、それだけで十分、高齢患者たちを活気づける。
 その上に、リハビリという名目がなければ明らかにセクハラに当たるであろうほど、若い彼らは患者たちに体を密着させてくる。
 患部やその周囲を執拗にマッサージし、背後から両脇に腕を入れて抱きかかえ、固くなった股関節を念入りにほぐし等々・・・。丁寧な声かけと優しい笑顔を伴って。
 科学的エビデンスに裏付けられたさまざま施術と並んで、あるいは施術以上に、患者にプラス効果をもたらすのは、接触による「若いエキス(笑)」の摂取である。

 リハビリとは、被害者による合法的なセクハラ行為である😘

 今日もソルティがマッサージを受けている隣りの寝台では、70才は超えていると覚しき小太りでちりちりパーマの女性が、30才くらいの彫りの深い阿部寛風イケメンスタッフに背後から羽交い締めにされて、顔を真っ赤にして恍惚境に彷徨っていた。二人の、複雑に絡み合った肢体は、まるでインドカジュラホの有名な男女神交合像のよう。

「痛くないですか?」
 耳元で優しく問いかけるイケメン。
「ん・・・だ、だいじょうぶ。良く効いてますゥ」

 見てはいけないものを見た気がした。

 いや、人のことは言えん。
 ソルティもまた、息子世代のさわやか系青年スタッフの容赦ない関節攻撃にアヘアへである。
 一週間の固定処置で硬くなった足首の関節と筋肉を元に戻すためには、それなりの痛みを覚悟しなければならない。ちょっとくらいエロスの魔法に頼って、「痛み」を「気持ち良さ」で緩和してもいいではないか。

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病室から拝む夕映え富士