現在、松葉杖の特訓中。
 5階病室と1階リハビリ室を往復したり、練習専用の短い階段の上り下りを繰り返している。

 10年以上前、登山中の滑落で右膝を傷めた際、松葉杖を使った。通勤も普通にしていた。
 だから、それほど大変なこととは思っていなかった。
 が、久しぶりの松葉杖はやけに使いづらく、不安定で、怖い。
 何でだろう?

 答えは簡単。
 老いゆえである。
 ケガした左足を支えるための右足や体幹の筋力、松葉杖を扱う両腕の力や握力が、10年前よりグッと落ちている。なににも増して、全身のバランス感覚と反射神経が衰えている。ちょっとした拍子にふらっと来る。
 近くで見守る青年スタッフの表情は、いい加減ガタが来ているのにそのことに気づかない困ったオヤジを懸念するものなのだ、と今日気がついた。

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 午前と午後の各1時間弱のリハビリ以外は、基本フリーな一日。
 巧まずして得られたこの貴重な時をいかに過ごそう?

 テレビはどうにもつまらない。
 映画を観る環境もない。
 他の入院患者とのおしゃべりも気が乗らない。(高齢者ばかりなのでつい仕事モードになってしまう。こんなところに来てまで傾聴・受容・共感するのか!?)
 電子ゲームにも興味ない。
 日中寝てしまうと、夜眠れなくなるので、昼寝もほどほどにしておきたい。

 つまるところ、読書、音楽鑑賞、瞑想、数独やクロスワードなどのパズル、そしてブログ更新あたりが定番になる。
 って、普段と変わらない?

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 入院すると、読書が趣味で良かったと、つくづく思う。
 ことに、面白いミステリーに没入していると、ここが病院であることも、自分が患者であることも、左足のギプスの鬱陶しさも、周りの騒音も、すべて遠のいてしまう。

 今日は東野圭吾作『白夜行』を読み終えた。
 今から20年も前に発表されたミステリーである。テレビドラマ化、映画化され、200万部を超えるベストセラーになり、当時はずいぶん話題になった。
 が、ソルティはテレビも映画も観ておらず、どういう話か全く知らなかった。

 
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 犯人探しの推理小説では全然なかった。
 反社会的人格障害の幼なじみの男と女が、非道な悪事を次から次へと起こしていく道行きをリアリティ豊かに描く犯罪小説。
 これがミステリー(謎)たるゆえんは、フーダニット(犯人は誰だ?)ゆえではなく、ハウダニット(犯行方法は?)ゆえでもない。ホワイダニット(犯行動機は?)ゆえである。それも二人が反社会的人格障害をまとうことになった、そもそもの要因、すなわち子供の頃のトラウマが最後まで伏せられているところにある。
 その謎が強烈なサスペンスを生んで、東野の圧倒的筆力と共に読者を惹きつけ、数百ページの大著を楽々とクリアさせる。
 おかげで寝不足。(これまた、松葉杖使用を危うくする)

 発表から20年経った今なお、全く古びていない傑作である。