1974年ATG配給
120分、カラー
実相寺は、ウルトラマンシリーズや『悪徳の栄え』(1988)の前衛的でシュールな演出で知られる奇才。
この映画には原作がある。
鎌倉時代中期、第89代天皇であった後深草院(1243-1304)の寵愛を受けた女官二条が、自らの半生をつづった日記、『とはずがたり』がそれで、つまりは古典文学である。
ウィキによると、『とわずがたり』は、1938年宮内庁図書寮で国文学者の山岸徳平が発見したという。それまで600年近く、その存在を知られず埋もれていたらしい。
凄いことがあるもんだ。
この映画には原作がある。
鎌倉時代中期、第89代天皇であった後深草院(1243-1304)の寵愛を受けた女官二条が、自らの半生をつづった日記、『とはずがたり』がそれで、つまりは古典文学である。
ウィキによると、『とわずがたり』は、1938年宮内庁図書寮で国文学者の山岸徳平が発見したという。それまで600年近く、その存在を知られず埋もれていたらしい。
凄いことがあるもんだ。
誰に問われるでもなく自分の人生を語るという自伝形式で、後深草院に仕えた女房二条の14歳(1271年)から49歳(1306年)ごろまでの境遇、後深草院や恋人との関係、宮中行事、尼となってから出かけた旅の記録などが綴られている。(ウィキ『とはずがたり』より抜粋)
ソルティは原作を読んでいないのではっきりとは言えないのだが、おおむね原作に忠実にシナリオ化されているようだ。(脚本は詩人の大岡信) 主役の二条は、映画では四条と改名されている。
数々の恋愛遍歴を経た挙句、世をはかなんで出家した女性の話という点で瀬戸内寂聴を連想する。まさしく寂聴は現代語訳を手がけ、『中世炎上』というタイトルで小説化もしている。共鳴するところ大であったのだろう。
また、『源氏物語』宇治十帖に登場する浮舟のその後、という感じもする。
男中心の生き難い世に、ひたすら心の安寧を探す女の物語なのだ。
四条を演じているジャネット八田という女優は、元プロ野球選手田淵幸一の妻である。演技は決して上手ではないが、ヌードも辞さない覚悟で熱演している。
演出は実相寺スタイルそのもので、画面全般が暗い、というより黒い。
灯火よりほかに照明のない時代で、室内シーンが多いので、実際に人の顔も分かたぬほど暗かったとは思う。
が、この暗がりが意味しているのは、物理的な暗さというより心理的暗さ、つまり無明なのだろう。四条をはじめとする登場人物たちの心の闇が、画面を覆っているのだ。
唯一、暗がりを破るものとして目立つのは炎のショットである。これはまた、どうしようもない人間の愛欲の比喩となる。炎めがけて飛び込み焼け死ぬ夏虫のごと、愛欲に突き動かされ、身を焼かれ、さらなる無明に陥る人間たち。
その輪廻から逃れるべく、四条は尼姿となって諸国流浪の旅に出たのである。
演出は実相寺スタイルそのもので、画面全般が暗い、というより黒い。
灯火よりほかに照明のない時代で、室内シーンが多いので、実際に人の顔も分かたぬほど暗かったとは思う。
が、この暗がりが意味しているのは、物理的な暗さというより心理的暗さ、つまり無明なのだろう。四条をはじめとする登場人物たちの心の闇が、画面を覆っているのだ。
唯一、暗がりを破るものとして目立つのは炎のショットである。これはまた、どうしようもない人間の愛欲の比喩となる。炎めがけて飛び込み焼け死ぬ夏虫のごと、愛欲に突き動かされ、身を焼かれ、さらなる無明に陥る人間たち。
その輪廻から逃れるべく、四条は尼姿となって諸国流浪の旅に出たのである。
おすすめ度 : ★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損