昨日、会員になっていたスポーツクラブを退会した。
 むろん、コロナのためである。
 
 昨年9月に入会したので、まだ7ヶ月ほどしか経っておらず、うち4ヶ月は足のケガで通えなかった。
 正味3ヶ月である。
 なのに、退会届を出すにあたって、ずいぶんと迷いあぐね、踏ん切りがつかず、度胸が要った。
 
 毎月8日が各種届の締切り日なので、この日を過ぎると翌月分も会員料金を取られる。
 銀行から自動的に引き落とされてしまう。
 4月分はすでに払い済みだが、5月分を払わずに済ませるためには、昨日が期限だった。
 
 骨折した足がある程度治ったところで、水中ウォーキングや筋トレマシーンでリハビリしたかった。
 だから、ここ4ヶ月はクラブに通えないにもかかわらず、毎月7000円の会員料金を納入してきたのである。
 
 今さら言うまでもないが、コロナ騒動でスポーツクラブ関連は甚大な被害を受けている。
 館内消毒を徹底する、定期的に換気する、プログラムを練り直して利用者の密集を防ぐ等々、クラブ側もいろいろと努力を重ねているのが、公式サイトから伺える。
 が、散歩の途中に窓の外から筋トレルームを覗くと、片手で数えられるほどしか利用者がいなくて、平素は隙間なく埋まっている専用駐輪場も櫛の歯が欠けたような有様。
 大丈夫だろうか?
 いつまで持ちこたえるだろうか?
 
 杖なしでも歩けるようになってきたので、本当ならそろそろクラブ復帰したかった。
 空いている夜のプールで歩行を楽しみ、トレーニングルームでヨガをしたかった。
 ミストサウナでぼーっとして、広いお風呂場でくつろぎたかった。
 思いっきり体を動かして汗をかいて、ぐっすり眠って、ストレス発散したかった。

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 もし、自分が高齢者や病人と関りを持つ介護の仕事をしていなかったならば、あるいは、80代の両親と一緒に暮らしていなかったならば、そのままクラブ会員であり続け、週3回通うであろう。
 おばさま会員のように、運動が終わってからロッカールームやサウナで長時間ぺちゃくちゃ喋るわけじゃないし、自分のメイン目的であるプールは塩素消毒が効いているから、コロナに感染する確率は低いと思う。
 満員電車での通勤のほうが、よっぽど危なかろう。
 とは言え、今は自分を守るためというより、他人を守るために、少しでもリスクある行動は控えなければなるまい。
 
 もし、3ヶ月後にコロナが終息すると分かっているならば、会員であり続けるかもしれない。
 その間お金はもったいないけれど、3ヶ月分くらいならば、クラブの経営を支えるために、クラブで働くスタッフの生活を支えるために、払い続けるのは惜しくない。
 つぶれてはこちらとしても困るのだ。
 
 そう、スタッフたちの生活・・・・。
 それを思うと、簡単に退会届を出せない自分がいる。
 彼らの失職に拍車をかける行為と思えば、心安からずである。
 
 一斉休校要請が出た3月半ばから「退会」という言葉が頭をかすめ、踏ん切りのつかないまま、昨日8日の期限を迎えてしまった。
 家を出てクラブに向かう途中も、クラブの入口の前のベンチでも、逡巡し続けた。
 運動を終え、はつらつとした表情の、肝の座った(?)利用者らが、三々五々出てくる。
 やっぱり、少ない。
 最盛期の5分の1くらいか?
 「ここまで利用者が減ったら、もう休館は時間の問題だろう・・・」
 そう思って、受付に向かった。
 
 退会手続きを取っている間も、人はやって来て、退会を申し出ている。
 やはり、皆ぎりぎりまで迷っていたのだろう。
 ソルティのように最近通い始めたのとは違い、何年も通い続け、日課となっている人も多い。
 スタッフと顔見知りになり、若い彼らとの交流こそが楽しみで来ている高齢者も少なくない。
 
 ここ数ヶ月ですっかり慣れたのだろう。
 担当スタッフは、淡々と事務的に、丁寧に、暗い顔ひとつ見せず、手続きを取ってくれた。
 「コロナが終息したら、また来てくださいね」
 
 こんなふうに、仕事の場がどんどん失われていっている。
 コロナ拡大防止のためには外出自粛も致し方ないけれど、失職した人たちへの補償をしっかりやってほしいものだ。
 失職した人々が失業保険申請のためにハローワークに駆け付ければ、感染拡大リスクが高まる。
 いっそ、スペイン政府のように、ベーシック・インカム(最低所得保障制度)を検討してはどうかと思う。

ウミガメ
また会う日まで