2018年フランス、ドイツ、イギリス、ポーランド、アメリカ共同制作
113分

 宇宙船を舞台とするSFスリラー。
 クレール・ドニは、『ショコラ』、『パリ、18区、夜。』、『ネネットとボニ』などで知られる国際評価の高いフランスの女流監督であるが、ソルティはこれが初見。

ブラックホールを調査するために宇宙を旅する船員たち。
彼らはみな終身刑や死刑を宣告された犯罪者で、無事地球に戻った暁には自由の身となる契約を交わしていた。
その中の一人、女性科学者ディブス(=ジュリエット・ビノシュ)は、宇宙空間で子供をつくり育てることができるかどうか、船員をモルモットにして実験していた。

 宇宙船の中で、大の男(=ロバート・パティンソン)が赤ん坊をあやす何とも奇抜なシーンから始まる。
 映像は、女性的感性を超え、独特のシュールなセンスが光る。
 ストーリー自体は面白さに欠け、テーマも曖昧でよくわからない。
 
 おそらくドニ監督が何より撮りたかったのは、大女優ジュリエット・ビノシュの魔女の如きマッドサイエンティストぶりであり、その迸るような熟女のエロチシズムなのだろう。
 この作品のクライマックスは、ビノシュのポルノ女優顔負けの本気オナニーシーンである。
 役の上のこととは言え、ここまでやってしまう役者魂にたまげる。
 
裸の女
 
 
 ジュリエット・ビノシュと言えば、『汚れた血』、『存在の耐えられない軽さ』、『トリコロール/青の愛』、そして『イングリッシュ・ペイシェント』などで世界的スターの座をほしいままにした、80年代後半から90年代が“旬”の清純派女優、というイメージを個人的には持っていた。
 いや、ヨーロッパの女優のたぶんにもれず、必然性あればヌードもセックスシーンも辞さない芸術家としての矜持はデビュー当初からみせていたが、その色白で清潔で可愛らしい容姿や、ジュリエットという可憐な名前のためか、何の役をやっても清廉なイメージが抜けきらない、いわば「フランスの吉永小百合」といった印象を持っていた。
 それがこの作品では、まるでダリオ・アルジェント監督のホラー映画に出てくるアリダ・ヴァリみたいな、一線を越えてケツまくったモーレツ熟女を演じている。
 怪演といっていい。

 オナニーマシーンにまたがって、下から突き上げる電動コ×シのピストン運動によがり声を上げ、長い髪を振り乱し、汗を飛び散らし、荒馬を乗りこなすように身をくねらすジュリエットの姿は、SFスリラーという装いを破壊してあまりある。
 フランスの仁支川峰子だ。



おすすめ度 : ★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損