2006年原書房

 厭魅(まじもの)と読ませる。

まじもの
① まじないをして呪うこと。また、その術。
② 人を惑わすもの。魔性のもの。
(小学館『大辞泉』)

 村社会ホラーミステリーといったところか。
 オカルトと民俗学と呪術がミックスされた因習的世界で、怪奇幻想作家が連続殺人の解明に当たる。
 横溝正史+柳田国男+永久保貴一+ディクスン・カー、といった感じ。

 こういった世界は好きなので、かなりの期待をもって読み始めた。
 が、残念ながら入り込めなかった。

 本作には複数の語り手がいて、章ごとに視点が変わる。
 この趣向、実は本作に仕掛けられている叙述トリックの種となっている。
 それを思いつき、それに挑戦した志は買う。

 だが、そのトリックを用いたことが、物語自体の勢いを殺いでしまった。
 次々と語り手が変わることで、そこまでせっかく盛り上がってきたスピードやサスペンスがブツ切られ、話そのものが沈滞している。
 どんなに素晴らしいトリックだろうが、それが物語の面白さを減退させては・・・。

 最初の殺人が起こるまで紙数の約3分の1を使っているのもいただけない。
 キャラクターもいまひとつ奥行を欠き、魅力が伝わってこない。
 終盤展開される推理もかなり杜撰。

 表紙絵が一番良かった。

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装画:村田修


おすすめ度 : ★ 

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損