お経の中の韻文、すなわち詩のような部分を偈(げ、 ガータ)と言う。

 お経には、全編が散文でできているものもあれば、全編が韻文(偈)でできているものもある。
 両者が混じっているものもある。

 おおむね、十二縁起五蘊六処四諦といった、お釈迦様の思想体系(=仏教の中核テーマ)に関わるものは散文形式のものが多く、お釈迦様の伝記に関することやエピソード風のものは「散文+韻文」形式のものが多いようだ。
 なので、純粋に読み物として面白いのは、後者である。

 ちくま学芸文庫『阿含経典』(増谷文雄編訳)第2巻では、「詩のある経典群」を取り上げている。


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 お釈迦様 v.s. 様々な相手(神々、悪魔、一般庶民、弟子たち、他の宗派の論敵など)のエピソードも面白いが、そこで応酬され、披露される詩の数々が、格調高く、含蓄あって、比喩や表現が豊かで、感心させられる。
 増谷の訳も簡潔にしてリズミカルで、すばらしい。

 一つ、クイズ形式で紹介したい。

 ある天神とお釈迦様(世尊)との対話である。

 その時、一人の天神があり、夜もすでにふけたころ、その素晴らしい光をもって、くまなくジェータ林を照らしながら、世尊を礼拝して、その傍らに坐した。
 傍らに坐したその天神は、世尊の御許にあって、このような偈を説いた。

  子にもひとしき可愛きものなく
  牛にもひとしき財宝はなく
  太陽にもひとしき光明はなく
  海はもっとも大いなる湖なり

 これに対して、世尊はこう仰せられた。

 (   ①   ) にもひとしき可愛きものなく
 (   ②   ) にもひとしき財宝はなく
 (   ③   ) にもひとしき光明はなく
 (   ④   ) こそは最高の湖なり
 

 さて、①~④にはどんな言葉が入るであろう?
 
 正解を考えるというよりは、「自分の場合はこれだ!」と当てはめてみるのも一興。

 お釈迦様の答えは、阿含経典を読む 6で。


太陽