1941年原著刊行
2004年原書房

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 黄金期本格推理小説の大御所の40年ぶりの新訳。
 原題は、Seeing Is Believing 「百聞は一見に如かず」。

 今読むと、殺人トリックも名探偵メリヴェール卿の推理もかなり荒唐無稽で、子供だましな感がする。
 真犯人の殺人動機を隠蔽する叙述トリックもまたフェアとは言い難い。
 しかし、巧みなストーリーテリングと会話の上手さ、そして平易な言葉で簡潔に状況を描写する文章力に、巨匠の腕前を見る。

 クリスティやクイーンもしかり。
 奇抜なトリックや明晰な推理で読者を唸らせる以前に、物語作家としての天分がすごいのだ。
 だから、ついつい夜更かししてしまい、他の作品にも手が伸びてしまい、気づいたら書棚の一角を占めることになる。

 カーター・ディクスンはなぜか未読が多い。
 これからの楽しみとする。



おすすめ度 : ★★

★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損