2014年スペイン
105分

 良質の刑事物サスペンスミステリー。
 連続少女猟奇殺人の犯人を追う、ベテランと若手の刑事コンビ(ゴリさんとジーパンのよう)の奮闘を描く。

 英語タイトルのマーシュランド Marshland とは「湿地帯」の意。
 スペイン語の原題 La isla minima とは「最も小さい島」の意。
 スペイン南部アンダルシア地方にある広大な湿地帯近くの田舎町が舞台である。

 フランコ独裁体制(1939~1975年)の爪痕が残る1980年代の物語なのだが、まさに80年代の良質なクライムサスペンスの匂いがふんぷんとしてくる。
 『ブラッド・シンプル』(1984)、『フール・フォア・ラブ』 (1985)、『ブルー・ベルベット』(1986)、『モナリザ』(1986)・・・・。
 懐かしい感があった。

 映像が素晴らしい。
 人の脳細胞のアップのような、田圃と畦道と水路の複雑に入り組む湿地帯の俯瞰から始まり、アンダルシアの田舎町の物憂くけだるい、未来永劫変わることのないような景観が重ねられる。
 音声が素晴らしい。
 蠅の飛び回る音、騒ぎ立てる鳥の声、暑苦しい虫の羽音、湿地を打つ雨音、フラメンコギターの物悲しくも心騒がす響き、これらが風土を知らしめるとともに、観る者の神経を苛立たせ、緊張を高める効果を生んでいる。

 スペイン風ゴリ&ジーパンの体を張った捜査のおかげで、犯人は判明し事件は解決した。
 が、ここからがスペイン映画らしいところ。
 スッキリとした円満ラストは用意しない。
 下手に深追いすればそれこそ湿地にはまり込むような過去の因縁が、観る者を暗澹たる気分にさせる。

湿地


おすすめ度 :
★★★


★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損