このまえの日曜の晩、友人と会食するために、一ヶ月ぶりに都心に出かけた。
 両者の住まいの中間にある池袋で会うことにした。
 池袋駅西口の東京芸術劇場前にある公園、いわゆるウエストゲートパークで待ち合わせた。

 しばらく前までここは工事をしていた。それも終わって、野外舞台のある円形劇場を兼ねた、明るく清潔な公園に生まれ変わった。
 一角にできたカフェもおしゃれで、芸術劇場のコンサート前後に寄るのにあつらえ向きである。

 かつてこの公園は、チーマたちの縄張り争いやホームレスのたまり場として、あまり印象良くなかった。
 ここで待ち合わせなんかしたら、オヤジ狩りに遭ってもおかしくはない雰囲気があった。
 円周の孤に沿って設置されている木のベンチに腰掛け、友人を待ちながら、そんな記憶をたどった。
 
 ベンチに座っている人たちは、隣りの人と1m以上の間隔を空けて横並びに座っている。
 もちろん、みなマスクをつけている。
 何も言わなくとも、自然とそのように配慮できるところが、日本人の美点だろう。


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 友人は酒を飲まないので、駅からやや離れたファミレスに行った。
 なるべく混雑は避けたい。
 さいわい店内は空いていて、テーブル間隔も十分離れているので、ここなら大丈夫だろうと思った。
 やはり、都心の繁華街での会食は気を遣う。
 池袋駅西口はまさに「夜の街」でもあるので、ウイルスが至る所にいるような気さえしてくる。
 見えない敵は厄介である。

 友人は現在テレワーク中で、毎日、自宅で携帯電話とパソコンを使い仕事をしていると言う。
 「自分のペースで働けて、さぼれるからいいねえ」と言ったら、思ったより忙しくて朝から夜までパソコンに向かっているという。
 積もる話をして、気づいたら3時間近く経っていた。
 どちらかがウイルスを持っていたら、相手にうつしていただろう。
 
 
 昨日は、足のリハビリのため、いつもの病院に行った。
 マッサージを受けながら担当の理学療法士と話していたら、こんなことを言う。
 「市内の〇〇という店で、スタッフに感染者が出たそうですよ」

 ソルティも知っている飲食店で、たまに店の前を通ることもある。
 が、主に若者をターゲットにしているこじゃれた店なので、オジサン、入ったことはない。
 「え? それどこからの情報?」と聞くと、
 「この前、髪切りに行って、そこの理容師から聞いたんです。その理容師は友だちから聞いたみたいです」
 「その友だちはどうやって知ったの?」
 「その友だちが、〇〇店の向かいの店でバイトしていて、ある日、〇〇店のシャッターが下りていて、そこに『感染対策を行うため、3日間休業します』と書かれていたんだそうです」
 「ふ~ん」
 
 家に帰って、さっそく家族に伝えようと思い、そこではっとした。
 ソルティの得た情報はまた聞きのまた聞きで、伝言ゲームのように誤って伝わっている可能性大だ。
 しかも、元の情報自体も確かなものではない。
 「感染対策を行う」=「感染者が出た」ではない。
 店内のテーブルの配置や座席の向きを感染対策用に変える、ということかもしれない。
 テーブル間に新たに衝立を設置しているのかもしれない。
 大体、本当にスタッフに感染者が出たら、3日間休業ではすまないのではないか?

 ここで下手に店の名前を口にしてしまったら、そこからまた噂は広がっていくことだろう。
 そのうち、ネットに店名や住所を書くヤツも出てくるかもしれない。
 風評被害ははかりしれない。

 こんなふうにして、自分でもたいして意識しないうちに、コロナ差別に加担してしまうのだなあ。

 
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Gerd AltmannによるPixabayからの画像