2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
 各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。
 お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
 ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。


【徳島県】


22番札所: 白水山 平等寺 (はくすいざん びょうどうじ)

22番
 五色なる 仏のひかり 平等に
 暮れゆく寺の 空を染めたり


御本尊: 薬師如来
本歌 : 平等にへだてのなきと きく時は あらたのもしき 仏とぞみる  
コメント: 高知からやって来た柔道体型の31歳の青年(野宿組)と語りながら、最後の峠を越え、納経所の閉まる直前にたどりついた。仏教を象徴する五色(赤・紫・白・黄・緑)の旗や帯が夕暮れの境内上空にひらめいて、鮮やかさに見惚れた。ここには足の不自由な人が巡礼に使った箱車が納められている。
【次の札所まで19.7㌔】



22番平等寺境内
平等寺境内


22番平等寺(箱車)
箱車


23番への道(初海)
ついに海岸線に到達!
(海部郡三波町の由岐漁港)


23番への道(南海地震の碑)
南海地震の津波の水位を示す碑
1946年(昭和21年)12月発生
死者・行方不明者は1443人に及んだという


23番への道(たいの浜)
たいの浜


23番への道(山座峠)
山座峠にてへんろ道を整備する人々
このあたりは、山と浜とが交互する(八坂八浜と言われるゆえん)



23番札所: 医王山 薬王寺 (いおうざん やくおうじ)

23番
 薬王の 闇に浮かびし 瑜祇(ゆぎ)塔は
 日和佐のまちの 灯台のごと

御本尊: 薬師如来
本歌 : みな人の 病みぬる年の 薬王寺 瑠璃の薬を あたえまします  
コメント: ウミガメで有名な日和佐の町と港を見下ろすかのように、小高い丘に立っている。中華風の朱色の塔が夜はライトアップされ、異国情緒を醸し出す。「日和佐まで来れた人は結願できるよ」と宿の女将に言われたのが心強かった。このあたりから脱俗気分が深まっていく。
【次の札所まで19.7㌔】

日和佐の夕暮れ
暮れゆく日和佐のまち
山の中腹に光るのが瑜祇塔


日和佐の宿
築100年の民家を改造した宿の部屋
明治時代の書生になった気がした


23番薬王寺
瑜祇塔
日和佐から室戸岬までは国道55号をひたすら歩く


24番への道(牟岐のデパート)
牟岐町のかつてのデパート
牟岐駅前で地元のおばさん(60代)と会話
「昔は賑やかだったのに、すっかり変わった」
「いるのは、おじいちゃん、おばあちゃんばかり」
「病院だけが残っている」



別格4番札所:鯖大師本坊(さばだいしほんぼう)

4番
 鯖を手に 語る大師の 本気度は
 ハトヤ坊主に 及ばざるかも 

御本尊: 弘法大師
本歌 : かげだにも 我名を知れよ 一つ松 古今来世を すくひ導く  
コメント: 徳島県最後のお寺。八坂山八坂寺(やさかじ)という寺号より、鯖大師の愛称で知られる。鯖を手にした弘法大師の像があると聞いていたので、昔のハトヤのCMの男の子(あれは少女ではありません)を想像していた。が、持ち方がそっけなかったので気が抜けた。このあたりはエビやアワビなど獲れたての魚介類を豪快に網焼きした海賊料理で有名。
【次の札所まで55.7㌔】


別格4番鯖大師本堂
鯖大師境内


別格4番鯖大師
山腹をくりぬいてつくられた全長88メートルの洞窟
四国88カ所のご本尊が並んでいる


別格4番鯖大師石像



24番への道(水床トンネル)
水床トンネルを抜けて高知県へ!


【高知県】

24番への道(東洋町の海)
東洋町はサーファー天国


24番への道(東洋町の宿)
泊まった宿の柱の落書き
当時17歳だった彼もいまや50歳近い
女将の話ではずっと通い続けているとか


24番への道(55号山と海)
岬巡りが延々と続く


24番への道(55号道路標識)



24番への道(夫婦岩)
ダイナミックな夫婦岩


24番への道(網を修理する漁師たち)
室戸市の三津漁港付近
漁を終え網を整備する漁師たち


24番への道(室戸水族館)
人気の高い室戸廃校水族館


24番への道(室戸水族館2)



24番札所: 室戸山 最御崎寺 (むろとざん ほつみさきじ)

24番
 ここがまあ 嵐のメッカ 最御崎
 白き大師は テレビの人よ

御本尊: 虚空蔵菩薩
本歌 : 明星の 出でぬる方の東寺 暗き迷いは などかあらまじ  
コメント: ついに室戸岬に到達。台風の際のテレビ中継でよく目にする白い弘法大師青年像を目にしたとき、有名タレントに会ったかのような感激が湧きおこった。岬の灯台に立つと、三面が海に囲まれる。西に目を向けると、幾重にも重なる岬のはるか彼方に足摺岬がかすんで見えた。あそこまで歩くのか・・・・。
【次の札所まで6.5㌔】

24番への道(白い大師像)
弘法大師19歳の青年像
高さ21メートル
昭和59年(1984年)に建立された


24番への道(みくろど)
御蔵洞(みくろど)
瞑想中の空海の口に金星が飛びこみ悟りに至った
現在、崩落の危険があり中には入れない


IMG_20181012_191915


室戸岬2
岬の先端は岩場だった

室戸岬
灯台からの景色
(画像拡大すると足摺岬が線になって見えます)


24番最御崎寺
最御崎寺境内
今夜の宿りは宿坊である


25番への道(室戸スカイラインからの景色)
翌朝、室戸岬を回って伊予湾を望む


25番への道(紀貫之の碑)
紀貫之朝臣泊舟之碑(津呂港)
土佐国司の任を終え都に帰る途中でシケに遭い、当地に泊まったことが
『土佐日記』に記されているとか
背後に見える白いビル(ホテルか?)の廃墟ぶりが目を引く



25番札所: 宝珠山 津照寺 (ほうじゅさん しんしょうじ)

25番
 津寺へと 往く道中で もよおして
 まさに駆け込み寺となりしか


御本尊: 揖取地蔵菩薩
本歌 : 法の船 入るか出づるかこの津寺 迷う我が身を のせてたまえや  
コメント: 室戸岬を制覇し、足も慣れて調子づいてきた頃。うかれ歩いていたら急に便意が! さっきのコンビニ(Yショップ)まで戻るか、それとも札所か。あぶら汗かきつつ、お寺に駆け込んだ。
【次の札所まで3.8㌔】



25番津照寺
津照寺山門


25番津照寺2
竜宮城のような鐘楼門



26番札所: 龍頭山 金剛頂寺 (りゅうずざん こんごうちょうじ)

26番
 金剛杖 ついて登りし頂に
 南国土佐の 風ぞ吹きぬる

御本尊: 薬師如来
本歌 : 往生に 望みをかくる 極楽は 月のかたむく 西寺の空  
コメント:団体客とかち合ったため、納経所が空くまで展望のよいところで涼みながら眺めを楽しんだ。自分が延々歩いてきた道や通り過ぎた町を高所から振り返るのは爽快である。室戸岬の西側の層なすヘアピンカーブ(室戸スカイライン)が面白い。
【次の札所まで27.5㌔】

26番金剛頂寺本堂
本堂


26番金剛頂寺(風景)
境内より室戸岬を望む




四国の白地図第5回

CraftMAPの白地図を使用しています。より詳しい四国地図を見たい方は、こちら(地図蔵)を参照ください。  


次回予告!
高知市内に入ります‼