2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。
お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。
【高知県】
室戸市吉良川町
国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている
明治期に建てられた漆喰壁の商家や、水切り瓦の蔵が立ち並ぶ
国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている
明治期に建てられた漆喰壁の商家や、水切り瓦の蔵が立ち並ぶ
“石ぐろ”と呼ばれる外壁
風雨から家を守るために河原石や浜石でつくられている
風雨から家を守るために河原石や浜石でつくられている
迷路のように入り組んだまちの散策が楽しい
関東や関西にあったら人気抜群の観光地になること間違いなし
関東や関西にあったら人気抜群の観光地になること間違いなし
海沿いの道が続く(羽根岬あたり)
台風の大波で打ち壊された大師堂(奈半利町)
宿泊した奈半利のホテル
この日の夕陽はきれいだった
27番札所: 竹林山 神峯寺 (ちくりんざん こうのみねじ)
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌 : みほとけの 恵みの心 神峯 山も誓いも 高き水音
コメント: 太子堂の横壁に書かれていた密教の重要経典たる『理趣経』の文言が愉快であった。性愛を肯定するこの経典の貸借を巡って、空海と最澄は袂を分かつことになった。境内を流れる名水をペットボトルにつめ、売店で野菜たっぷりうどんを食べ、元気よく次の札所へ向かった。【次の札所まで37.5㌔】
神峯寺は430mの高みにある
本堂
大師堂横壁に書かれている『理趣経』の主旨
ちなみに、原文では「異性」とは限定していない
ちなみに、原文では「異性」とは限定していない
さらに登った展望塔(569m)からは足摺岬が見えた
松林のサイクリングロード
琴が浜
このあたりのへんろ道は土佐くろしお鉄道・ごめんなはり線と
並行しているので、列車でスキップしてしまうへんろも多い。
海沿いのとても気持ちいい道なのでもったいない。
このあたりのへんろ道は土佐くろしお鉄道・ごめんなはり線と
並行しているので、列車でスキップしてしまうへんろも多い。
海沿いのとても気持ちいい道なのでもったいない。
飾りや置物や掲示物のにぎやかなへんろ小屋
伊能忠敬観測記念碑(香南市赤間町)
この地点は北緯33度33分
?????
御本尊: 大日如来
本歌 : つゆ霜と 罪を照らせる大日寺 などか歩みを 運ばざらまし
コメント: 大日寺に向かう途中で、前方の山の上に西洋風の城がそびえているのが目に入った。シャトー三宝という名の四万十川資料館だった建物で、2000年に閉鎖されたという。レストランや遊園地も備えたレジャーランドだったらしい。一千年を超える大日寺の伝統にくらべると、資本経済の無常をまざまざと感じる。【次の札所まで7.5㌔】
ゲストハウス水仙
ここで台湾青年の陳さん(30歳)と相部屋になり、いろいろと語り合った
「二ヶ月の無給休暇で来ている」 「日本好きで、これが5回めの来日」
「台湾はいま環境破壊が問題になっている」等々、真面目で礼儀正しく賢い人だった
ここで台湾青年の陳さん(30歳)と相部屋になり、いろいろと語り合った
「二ヶ月の無給休暇で来ている」 「日本好きで、これが5回めの来日」
「台湾はいま環境破壊が問題になっている」等々、真面目で礼儀正しく賢い人だった
29番へはのどかな畑の道をゆく
このあたりで22周目というベテラン遍路Kさんと出会う
以後のサポートセンターになってもらった
壁が破れて人との交流が楽しくなってきた頃
以後のサポートセンターになってもらった
壁が破れて人との交流が楽しくなってきた頃
29番札所: 摩尼山 国分寺 (まにざん こくぶんじ)
御本尊: 千手観世音菩薩
本歌 : 国を分け 宝を積みて建つ寺の 末の世までの 利益のこせり
コメント:木々に囲まれた静かな境内で、近くの小学校の児童たちが写生をしていた。偏見かもしれないが、地方の子供たちはやっぱり可愛い。ご本尊の菩薩さまもやさしく見守っておられるような気がした。下の句は万葉集(山上憶良)から頂いた。【次の札所まで6.9㌔】
本殿の裏手の森が霊気満ちてすばらしかった
30番札所: 百百山 善楽寺 (どどやま ぜんらくじ)
御本尊: 阿弥陀如来
本歌 :人多く 立ち集まれたる一の宮 昔も今も 栄えぬるかな
コメント: 土佐一宮神社の隣にある。神仏習合の時代は神社の別当寺だった。現在の住職は、2016年にご尊父から引き継いだ島田希保さん。高知の札所では唯一の女性住職である。まだ30代、頑張ってほしい。【次の札所まで6.6㌔】
御本尊: 文殊菩薩
本歌 : なむ文殊 三世の仏の母ときく 我も子なれば 乳こそほしけれ
コメント: 高知市街に入った。路面電車(とさでん交通)の軌道を越え、結構きつい石段を登ると、知らぬ間に県立牧野植物園の中に無料入園している。かつてはここに宿坊があったそうだ。南国の植物を見物した先に、見事な五重塔の立つ竹林寺はある。近くの五台山から見た市街の眺めが素晴らしかったな。【次の札所まで5.7㌔】
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌 : 静かなる 我がみなもとの 禅師峰寺 浮かぶ心は 法の早船
コメント:地図で見ると、この札所は土佐湾の一番奥まったところに位置し、室戸岬と足摺岬を頂点とするL字の交点をなす。つまり、室戸の終わり=足摺のはじまり。高知でオフをとったこともあり、自然と気合が入った。札所前で出会い、しばらく一緒に歩いた香川のTさん(60代)は話好きの楽しい人で、この先も宿や遍路小屋でしばしば再会を繰り返すことになる。【次の札所まで8.9㌔】
次回予告!
龍馬ファンの聖地・桂浜に行きます‼