2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
 各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。
 お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
 ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。


【愛媛県】

44番への道(さらば大洲)
さらば愛しき大洲よ


44番への道(国道56号)
交通量の多い国道56号をいく



別格8番札所: 十夜ヶ橋(とよがばし)

8番
 不思議やな 浮世も沈む 大水に
 十夜ヶ仏の はしも浸からず

ご本尊: 弥勒菩薩
本歌 : ゆきなやむ 浮き世の人を 渡さずば 一夜も十夜の 橋と思ほゆ
コメント: 橋のたもとの永徳寺で御朱印をもらう。ここは7月7日豪雨の際、近くを流れる肱川(ひじかわ)が氾濫し、本堂床上1m以上が水に浸かった。水はご本尊の足下5センチで止まったという。橋の下に寝ている弘法大師はすっかり水の中だったろう。
【次の札所まで43.6㌔】


十夜ヶ橋1
十夜ヶ橋


十夜ヶ橋2
橋の下に眠るお大師様
眠りを妨げてはいけないという理由から
「遍路は橋の上では杖を突いてはならない」というルールが生まれた


十夜ヶ橋3
永徳寺本堂


十夜ヶ橋4(本尊)
ご本尊:弥勒菩薩


44番への道(内子まちなみ)
内子のレトロ&エレガントなまちなみ


44番への道(内子旭館1)
内子の映画館(旭館)の遺構

44番への道(内子旭館2)



大瀬のあたり
小田川の風景(大瀬)
ノーベル文学賞作家・大江健三郎のふるさと
親戚筋という翁との出会いがうれしかった


44番への道(突合)
突合(つきあわせ)
ひわた峠遍路道と農祖峠遍路道との分岐


44番への道(突合2)
右が農祖(のうその)峠への、左がひわた峠への道
いずれを取るか、歩きへんろが迷う地点である


44番への道(ひわた峠1)
ひわた峠を選んだ
田渡川沿いに至極快適な舗装路が続く
車もほとんど通らない


44番への道(ひわた峠2)
山道は最後の3キロ程度だけ
いまの遍路はラクしてるよなあ~


44番への道(ひわた峠3)
ひわた峠のピーク(790m)


44番への道(ひわた峠4)
久万高原(標高500m位)が見えました!



44番札所: 菅生山 大寶寺 (そごうざん だいほうじ)

44番
 ひわた越え 久万高原に 降り立ちて
 だいほう(待望)の味 「心」のうどん

御本尊: 十一面観音菩薩
本歌: 今の世は 大悲のめぐみ 菅生山 ついには弥陀の ちかいをぞまつ
コメント: ひわた峠(790m)を越えて久万高原に来てみたら、街路樹はエンジに色づいてすっかり秋であった。ベテラン遍路Kさんに教えてもらったうどんの名店「心」に直行する。開店前から列をなす人気ぶり。評判通り、実に歯ごたえ良く美味であった。
【次の札所まで8.4㌔】


44番への道(うどんの心)
うどんの名店「心」


心のうどん
おにぎり2個つきで550円
生涯食べたなかで最も美味いうどんとなった


44番大宝寺本堂
大寶寺本堂


45番への道(かわいのへんろ小屋)
45番へ行く途中にある河合のへんろ小屋
ここにデジカメを置き忘れ、取りに戻って30分のロス
忘却は忘れたころにやってくる



45番札所: 海岩山 岩屋寺 (かいがんざん いわやじ)

45番
 くれなゐに 染まる岩屋の 絶景は
 アチャラナータ(不動明王)の接待と見ゆ

御本尊: 不動明王
本歌 : 大聖の いのる力の げに岩屋 石のなかにも 極楽ぞある
コメント: 巨岩に囲まれた岩屋寺の荘厳も素晴らしかったが、帰りに通った古岩屋の円錐状の礫岩の迫力と、それをここぞと飾る紅葉のあでやかさに言葉を失った。天気も上々、行楽客もずいぶん出ていた。こんな瞬間に立ち会えるなんて・・・・!
【次の札所まで29.0㌔】


45番岩屋寺1
本堂
はしごで横の岩穴に登ることができる
とくに何があるというわけではない(笑)


45番岩屋寺2
この構図、秩父巡礼札所第28番橋立堂を思い出した


45番岩屋寺3
古岩屋


45番岩屋寺4



46番への道(三坂峠2)
早朝の三坂峠付近
ここから松山市に向かって下りに入る

46番への道(三坂峠)
三坂峠より松山市と瀬戸内海を望む


46番への道(丹波の里接待所)
峠を下りた所にある丹波の里接待所


46番への道(丹波の里接待所2) (2)
へんろを迎える地元の方々
赤飯とおでんとみかんとお茶の接待にあずかった
週一回のオープン日にあたってラッキー!
薪を使ったストーブの火がぬくくて気持ちよかった
ありがとうございました



46番札所: 医王山 浄瑠璃寺 (いおうざん じょうるりじ)

46番
 木の間より ついにあらわる松山は
 浄瑠璃色に かすみ浮かべり

御本尊: 薬師如来
本歌 : 極楽の 浄瑠璃世界たくらえば 受くる苦楽は 報いならまし
コメント: 関西から来た話好きの看護師の男(40代前半)と連れ立って、足もとの悪い三坂峠を下っていくと、不意に木々の間から松山と瀬戸内海が見渡せた。全行程の3/4は来た。結願の実現がほの見えた瞬間であった。浄瑠璃寺から道後温泉まで短い間隔で寺が続く。
【次の札所まで0.9㌔】


46番浄瑠璃寺
浄瑠璃寺入口


46番浄瑠璃寺付近の道しるべ



47番札所: 熊野山 八坂寺 (くまのざん やさかじ)

47番
 八大の 地獄めぐりが 怖ければ
 ゆめさかしらに 物は言ふまじ

御本尊: 阿弥陀如来
本歌 : 花を見て 歌よむ人は八坂寺 三仏じょうの 縁とこそ聞け
コメント :ここは何と言っても、地獄と極楽の絵がある閻魔堂が印象的であった。劇画タッチの絵は誰の手によるものなのだろう。八大地獄とは下から、無間・大焦熱・焦熱・大叫喚・叫喚・衆合・黒縄・等治をいう。
【次の札所まで1.0㌔】


47番葉八坂寺
境内

地獄絵図47番八坂寺
えんまさま
 

別格9番札所: 文殊院(もんじゅいん)

9番
 後世に 名が残りたる 代価とて
 厳しからずや 文殊の罰は

ご本尊: 地蔵菩薩 文殊菩薩
本歌 : われ人を すくわんための 先だつに みちびきたまう 衛門三郎
コメント: 衛門三郎は、弘法大師に無礼を働いたため、8人の子供を喪うという罰を受けた。改心し、21回目の四国巡礼の際、大師に出会い謝罪した。へんろ道のあちこちに土下座像が建てられていて、ちょっと可哀想。この寺は彼の屋敷跡に立つという。正式には、大法山文殊院徳盛寺(とくじょうじ)と号す。
【次の札所まで3.5㌔】


別格9番文殊院
境内


別格9番文殊院(焼山下の衛門三郎像)
弘法大師に土下座して謝罪する衛門三郎
(12番焼山寺を下りたところにある杖杉庵の像)



四国の白地図第10回


CraftMAPの白地図を使用しています。より詳しい四国地図を見たい方は、こちら(地図蔵)を参照ください。  



次回予告
道後温泉に入ります‼