2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。
お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。
【愛媛県】
さらば愛しき大洲よ
交通量の多い国道56号をいく
別格8番札所: 十夜ヶ橋(とよがばし)
十夜ヶ仏の はしも浸からず
ご本尊: 弥勒菩薩
本歌 : ゆきなやむ 浮き世の人を 渡さずば 一夜も十夜の 橋と思ほゆ
コメント: 橋のたもとの永徳寺で御朱印をもらう。ここは7月7日豪雨の際、近くを流れる肱川(ひじかわ)が氾濫し、本堂床上1m以上が水に浸かった。水はご本尊の足下5センチで止まったという。橋の下に寝ている弘法大師はすっかり水の中だったろう。【次の札所まで43.6㌔】
十夜ヶ橋
橋の下に眠るお大師様
眠りを妨げてはいけないという理由から
「遍路は橋の上では杖を突いてはならない」というルールが生まれた
眠りを妨げてはいけないという理由から
「遍路は橋の上では杖を突いてはならない」というルールが生まれた
永徳寺本堂
内子のレトロ&エレガントなまちなみ
内子の映画館(旭館)の遺構
突合(つきあわせ)
ひわた峠遍路道と農祖峠遍路道との分岐
ひわた峠遍路道と農祖峠遍路道との分岐
右が農祖(のうその)峠への、左がひわた峠への道
いずれを取るか、歩きへんろが迷う地点である
いずれを取るか、歩きへんろが迷う地点である
ひわた峠を選んだ
田渡川沿いに至極快適な舗装路が続く
車もほとんど通らない
田渡川沿いに至極快適な舗装路が続く
車もほとんど通らない
山道は最後の3キロ程度だけ
いまの遍路はラクしてるよなあ~
いまの遍路はラクしてるよなあ~
ひわた峠のピーク(790m)
久万高原(標高500m位)が見えました!
44番札所: 菅生山 大寶寺 (そごうざん だいほうじ)
だいほう(待望)の味 「心」のうどん
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌: 今の世は 大悲のめぐみ 菅生山 ついには弥陀の ちかいをぞまつ
コメント: ひわた峠(790m)を越えて久万高原に来てみたら、街路樹はエンジに色づいてすっかり秋であった。ベテラン遍路Kさんに教えてもらったうどんの名店「心」に直行する。開店前から列をなす人気ぶり。評判通り、実に歯ごたえ良く美味であった。【次の札所まで8.4㌔】
うどんの名店「心」
大寶寺本堂
45番へ行く途中にある河合のへんろ小屋
ここにデジカメを置き忘れ、取りに戻って30分のロス
忘却は忘れたころにやってくる
ここにデジカメを置き忘れ、取りに戻って30分のロス
忘却は忘れたころにやってくる
45番札所: 海岩山 岩屋寺 (かいがんざん いわやじ)
アチャラナータ(不動明王)の接待と見ゆ
御本尊: 不動明王
本歌 : 大聖の いのる力の げに岩屋 石のなかにも 極楽ぞある
コメント: 巨岩に囲まれた岩屋寺の荘厳も素晴らしかったが、帰りに通った古岩屋の円錐状の礫岩の迫力と、それをここぞと飾る紅葉のあでやかさに言葉を失った。天気も上々、行楽客もずいぶん出ていた。こんな瞬間に立ち会えるなんて・・・・!【次の札所まで29.0㌔】
本堂
はしごで横の岩穴に登ることができる
とくに何があるというわけではない(笑)
とくに何があるというわけではない(笑)
この構図、秩父巡礼札所第28番橋立堂を思い出した
三坂峠より松山市と瀬戸内海を望む
峠を下りた所にある丹波の里接待所
へんろを迎える地元の方々
赤飯とおでんとみかんとお茶の接待にあずかった
週一回のオープン日にあたってラッキー!
薪を使ったストーブの火がぬくくて気持ちよかった
ありがとうございました
薪を使ったストーブの火がぬくくて気持ちよかった
ありがとうございました
46番札所: 医王山 浄瑠璃寺 (いおうざん じょうるりじ)
浄瑠璃色に かすみ浮かべり
御本尊: 薬師如来
本歌 : 極楽の 浄瑠璃世界たくらえば 受くる苦楽は 報いならまし
コメント: 関西から来た話好きの看護師の男(40代前半)と連れ立って、足もとの悪い三坂峠を下っていくと、不意に木々の間から松山と瀬戸内海が見渡せた。全行程の3/4は来た。結願の実現がほの見えた瞬間であった。浄瑠璃寺から道後温泉まで短い間隔で寺が続く。【次の札所まで0.9㌔】
47番札所: 熊野山 八坂寺 (くまのざん やさかじ)
御本尊: 阿弥陀如来
本歌 : 花を見て 歌よむ人は八坂寺 三仏じょうの 縁とこそ聞け
コメント :ここは何と言っても、地獄と極楽の絵がある閻魔堂が印象的であった。劇画タッチの絵は誰の手によるものなのだろう。八大地獄とは下から、無間・大焦熱・焦熱・大叫喚・叫喚・衆合・黒縄・等治をいう。【次の札所まで1.0㌔】
別格9番札所: 文殊院(もんじゅいん)
ご本尊: 地蔵菩薩 文殊菩薩
本歌 : われ人を すくわんための 先だつに みちびきたまう 衛門三郎
コメント: 衛門三郎は、弘法大師に無礼を働いたため、8人の子供を喪うという罰を受けた。改心し、21回目の四国巡礼の際、大師に出会い謝罪した。へんろ道のあちこちに土下座像が建てられていて、ちょっと可哀想。この寺は彼の屋敷跡に立つという。正式には、大法山文殊院徳盛寺(とくじょうじ)と号す。【次の札所まで3.5㌔】
境内
弘法大師に土下座して謝罪する衛門三郎
(12番焼山寺を下りたところにある杖杉庵の像)
(12番焼山寺を下りたところにある杖杉庵の像)
次回予告
道後温泉に入ります‼