2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。
お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。
【愛媛県】
み・みずがない!?
48番札所: 清滝山 西林寺 (せいりゅうざん さいりんじ)
水草の 揺るぐ小川の 橋渡り
さいりん(再臨)したき
この清き寺
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌 : 弥陀仏の 世界をたずね行きたくば 西の林の寺にまいれよ
コメント: 重信川(一級河川)を渡って松山市に入る。が、なんと水無川だった。豪雨が続くと氾濫するという。その先に弘法大師が杖で突いたら湧き出した「杖の淵」と呼ばれる泉がある。その流れが寺の外を巡り、非常に気持ちいい境内だった。水草は刺身のツマに使う“ていれぎ”という種類らしい。この歌は作るのに苦心した。
【次の札所まで3.1㌔】
49番札所: 西林山 浄土寺 (さいりんざん じょうどじ)
いよてつの 遮断機上がる その先に
浄土の門の
護り手ぞ立つ
御本尊: 釈迦如来
本歌 : 十悪のわが身をすてず そのままに 浄土の寺に 参りこそすれ
コメント: 伊予鉄道横河原線の久米駅のそばにある。48番から行くと、踏切を渡った正面に立派な仁王門がそびえる。おっかない顔した左右の金剛力士像に出迎えられるのは、十悪の身としてはちょっと(かなり?)怖い。この本歌、好きである。
【次の札所まで1.7㌔】
国の重要文化財の指定を受けている
50番札所: 東山 繁多寺 (ひがしやま はんたじ)
御本尊: 薬師如来
本歌 : よろずこそ はんたなりとも怠らず 諸病なかれと 望み祈れよ
コメント: 住宅街の路地やお墓の中を抜けて登ったところにある。境内には釣り堀のような池が二つあり、その向こうに松山市街や松山城、瀬戸内海まで見える。繁多(用事が多く忙しい)という名前に似つかわしくない静かな境内であった。
【次の札所まで2.8㌔】
51番札所: 熊野山 石手寺 (くまのさん いしてじ)
御本尊: 薬師如来
本歌 : 西方を よそとは見まじ 安養の 寺にまいりて 受くる十楽
コメント: 道後温泉の近くにあるせいか、観光客や修学旅行生で賑わっていた。門前店は並ぶわ、お化け屋敷のような洞窟(全長160m)はあるわ、国宝や重文や宝物館はあるわ、いろんな慈善活動・政治活動を呼びかけるパンフレットやポスターはあるわ・・・・なんでもありのアミューズメントパークのようなお寺であった。住職がヤル気満々なのか。いや、寺とは元来こういう所だったのだろう。
【次の札所まで10.7㌔】
(モデルは若尾文子?)
いや、そもそも石手寺の名の由来が彼と関係ある。
三郎の死の間際に弘法大師がその手に石を握らせた。
その石を手にした赤子が後年生まれた(輪廻転生)。
石はこの寺に納められたという。
しかし、このサブちゃんの姿は哀れすぎる
40分歩いたところで靴を間違ったことに気づき、タクシーで戻ったという
なんと彼はソルティの靴を履いていったのだ!
何も知らず漫画を読んでいたのんきな自分
「色里や 十歩はなれて 秋の風」(正岡子規)
健康的だ
52番札所: 瀧雲山 太山寺 (りゅううんざん たいさんじ)
太山の道をも塞ぐ 催涙雨
人のこひぢ(乞い路)を妬むものかな
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌 : 太山へ のぼれば汗のいでけれど 後の世おもえば 何の苦もなし
コメント: 国宝の本堂を拝むことができなかったのは、参道の崖が崩れて通行止めになっていたから。ここでも七夕豪雨が爪痕を残していた。御朱印はふもとの本坊で受けた。催涙雨とは七夕に降る雨のこと。彦星と織姫が会えないことを嘆く涙とか。仏を乞う道まで邪魔しなくとも・・・。
【次の札所まで2.6㌔】
(ウィキペディア「太山寺」より)
53番札所: 須賀山 円明寺 (すがざん えんみょうじ)
御本尊: 阿弥陀如来
本歌 : 来迎の 弥陀の光の円明寺 照りそう影は 夜な夜なの月
コメント: 境内の目立たぬ一隅に、聖母マリアの彫られた灯籠がある。かつて隠れキリシタンが礼拝していたという。それを黙認していたお寺のふところの深さを想う。円明とは、理知円満の境地に達して明らかに悟ること。
【次の札所まで34.4㌔】