2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。
【愛媛県】
64番札所: 石鎚山 前神寺 (いしづちさん まえがみじ)
御本尊: 阿弥陀如来
本歌 : 前は神 うしろは仏 極楽の よろずの罪を くだくいしづち
コメント: 修験道の祖、役小角が開基したと伝えられる。四国遍路には名前に「神」の字がつくお寺が3つある。64番のほかに、27番神峯寺、68番神恵院(別格17番神野寺入れると4つ)。むろん神仏習合のなごりだが、よく考えてみるとけったいな話である。キリスト教の教会に「アッラーなんとか」って名がついているようなものだ。仏教で神道で修験道・・・・。日本文化のユニークさ、節操のなさ。【次の札所まで27.4㌔】
別格12番札所: 摩尼山 延命寺(まにざん えんめいじ)
ご本尊: 延命地蔵菩薩
本歌 : 千代かけて 誓いの松の ほとりこそ なほありがたき 法の道かな
コメント: 寺の起こりのいわれとなったいざり松の祀られた庭園でサニーさんと再会、昼食をともにした。もうすぐ愛媛も終わり。結願を心待ちにする一方、さびしさが湧いてきた。「いつまでも続いてほしいね」 サニーさんと意見が合った。携帯電話を持っていない彼女の代わりに、この先の宿の予約をとってあげる。彼女も別格打ちしているので、しばらく同じ宿に泊まることにした。基本、歩きは別である。【次の札所まで17.8㌔】
山門
寺の縁起によると
弘法大師が寺の松の下に一人のイザリ(歩けない者)がいるのを見て憐み、
霊符をさずけたところ、たちまち全快した。イザリは大師のもと出家した。
弘法大師が寺の松の下に一人のイザリ(歩けない者)がいるのを見て憐み、
霊符をさずけたところ、たちまち全快した。イザリは大師のもと出家した。
JR 伊予三島駅近くのスーパーで夕食を買う
大きな町である
翌朝、65番三角寺へ向かう山道より伊予三島を見下ろす
65番札所: 由霊山 三角寺 (ゆれいざん さんかくじ)
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌 : おそろしや 三つの角にも入るならば 心をまろく 慈悲を念ぜよ
コメント: ここから別格打ちにとって最大の難所がスタート。三角寺から780mの地蔵峠を越えて別格13番に、山麓を回って本道に戻り別格14番に、県境を越え徳島県箸蔵山(540m)にある別格15番に、そこから遍路最高峰910mの雲辺寺に登り、香川県に下る。88の本道を逸れる三角形を2つ描きながらの山登りが3つ。境内の散り際の四季桜がきれいだったな。【次の札所まで4.1㌔】
境内
四季桜
4月上旬と10月下旬の年2回開花する
4月上旬と10月下旬の年2回開花する
別格13番仙龍寺へ向かう山道入口
馬場の桜(エドヒガン)
高さ20.4m、樹齢推定200年
春に別格打ちする歩き遍路だけが開花を見ることができる
清滝
まごうかたなきパワースポット
まごうかたなきパワースポット
別格13番札所: 金光山 仙龍寺(こんごうさん せんりゅうじ)
ご本尊: 弘法大師
本歌 : 極楽は 他にはあらぬ この寺に 御法の声を きくぞうれしき
コメント: 宮崎駿の『千と千尋の神隠し』に出てくる「油屋」を思わせる古式ゆかしいつくり(道後温泉本館と同じ様式)。今を盛りの赤や黄色の紅葉に囲まれ、主人公の少女・千尋同様、異界にタイムスリップしたような心地。上流の滝から続く清流が本堂の床下を流れ、渓谷をなしているのも驚き。もっとも良かった札所の一つである。【次の札所まで9.2㌔】
昭和9年10月竣工
金田一耕助のミステリー映画に出てきそうな雰囲気である
本堂の真下を滝が流れ、渓谷に注ぐ
遍路ハウス・毛利荘
管理人さんは高校の元英語教師で、たいへんマメな方。
使っていない生家の跡地を利用したとのこと。
清潔で、なんでも揃っていて、居心地のいい宿だった。
このあたりは宿が少ないのでありがたかった。(サニーさんと同宿)
使っていない生家の跡地を利用したとのこと。
清潔で、なんでも揃っていて、居心地のいい宿だった。
このあたりは宿が少ないのでありがたかった。(サニーさんと同宿)
別格14番札所: 椿堂(つばきどう)
ご本尊: 延命地蔵菩薩 非核不動尊
本歌 : 立ち寄りて 椿の寺に やすみつつ 祈りをかけて 弥陀をたのめよ
コメント: 邦治山常福寺の号をもつ。弘法大師が当地に流行る病いの退散を祈り、土に杖をさすと、そこから椿が育ったという。本尊の大聖不動尊は、核兵器廃絶を願って非核不動尊と呼ばれている。ここは何と言っても、境内の片すみにある道祖神が見物。前たれで隠してあるので、気づかない人も多いだろう。この日は一日サニーさんと楽しく歩いた。【次の札所まで24.0㌔】
山門
一つ一つのお堂に線香を上げ、心を込めて祈るサニーさん

その名も境目トンネル(855m)を抜けて徳島県へ
【徳島県】
その名も境宮神社で昼食休憩
三好市池田町の吉野川沿いの宿
親切なオーナーの世話になった
別格15番への道は吉野川沿いを歩く
四国中央橋を渡る
別格15番札所: 宝珠山 箸蔵寺(ほうじゅさん はしくらじ)
ご本尊: 金毘羅大権現
本歌 : いその神 ふりにし世より 今もなほ 箸運ぶてふ ことの尊き
コメント: この札所は徳島県三好市に位置する。甲子園で有名な池田高校の地元。山間を深緑の吉野川が流れる風光明媚な町だった。箸蔵山(540m)の頂にある札所は、空気が澄み、紅葉も景色も素晴らしかった。下りはロープウェイを使った。その後、サニーさんと一緒に、宿のオーナーの運転で、大歩危・小歩危や祖谷のかずら橋に遊んだ。脱サラして宿を始めたという。夏場は世界中から来るラフティング客で賑わい、宿は目まぐるしい忙しさだそうだ。【次の札所まで19.1㌔】