2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
 各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
 ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。


【香川県】

71への道(こじき遍路)
71番への道(JR予讃線・みの駅付近)
30回以上は回っているという野宿のお遍路さん(70代)と遭遇
野宿ポイントがしっかり頭に入っていた。さすがパッキングもうまい。
自分の老後の姿かも・・・・ワルクナイ


いやだに寺階段
弥谷寺の階段
てっぺんの本堂まで570段を上る



 71番札所: 剣五山 弥谷寺 (けんござん いやだにじ)

71番
 ものさびし 長き石段 いやだにじ
 足の重さは つかれたせいか

御本尊: 千手観音菩薩
本歌 : 悪人と 行きつれなんも いやだにじ ただかりそめも 良き友ぞよき
コメント: 本堂まで570段の急な石段を登る。高齢者にはきつかろう。
たそがれ時に訪れたせいもあろうが、薄暗くてじめっとした雰囲気。全札所中、もっとも霊がいそうな気がした。
弘法大師は子供の頃、この岩屋で勉強したという。
【次の札所まで3.7㌔】


いやだに寺大師堂
大師堂
中に納経所と弘法大師が修行した獅子の岩屋がある


いやだに寺本堂
本堂


いやだに寺風景
本堂からの景色



72番札所: 我拝師山 曼荼羅寺 (がはいしざん まんだらじ)

72番
 お大師の まつてふ寺に 来てみれば
 曼荼羅菩薩 われをまつなり

御本尊: 大日如来
本歌 : わずかにも 曼荼羅おがむ人はただ ふたたびみたび かえりざらまし
コメント: 弘法大師が植えられたといわれる不老松(平成14年枯れ死)の幹に刻まれた笠松大師が見物。納経所で聞いたところ、琴平に住む平田さんという方が刻まれたそうな。
あまり目立たぬ場所にあるが、彩色された地蔵菩薩像がまさに曼荼羅のように美しかった。
【次の札所まで0.6㌔】


曼荼羅寺山門
山門


曼荼羅寺境内
境内
弘法大師の先祖・佐伯家を祀る寺で開基は古い(596年)


曼荼羅寺笠松大師
笠松大師


曼荼羅寺美しい菩薩像
ガイドブックには載っていない無名の仏像との
思わぬ出会いも楽しいものだ



73番札所: 我拝師山 出釈迦寺 (がはいしざん しゅっしゃかじ)

73番
 定年の のちも毎日 しゅっしゃかじ
 七つの真魚の 誓いを継いで

御本尊: 釈迦如来
本歌 : 迷いぬる 六道衆生すくわんと 尊き山に 出ずる釈迦寺
コメント: 弘法大師7歳のみぎり、衆生を救うことを誓って我拝師山(481m)の崖(捨身ヶ嶽禅定)から飛び降りたという。この険しい傾斜の岩山をすでに3万回以上登り下りしている信仰篤き地元のNさん(70代)と出会ったのが忘れられない。真魚(まお)とは幼少時の空海の名前。
【次の札所まで2.2㌔】


出釈迦寺境内
境内


出釈迦寺境内より捨身が岳を望む
境内から我拝師山をみる
登るかどうか迷っているところ


出釈迦寺捨身が岳への参道
登ることにした


出釈迦寺捨身が岳からの眺め
捨身ヶ嶽禅定からの景色
池の向こうに弥谷山と天霧山が並んでいる
この二つのテーブル状の山は香川を歩いているとよく目立つ


甲山寺付近の風景
我拝師山を振り返る



74番札所: 医王山 甲山寺 (いおうざん こうやまじ)

74番
 真魚もまた 競わせけるや かぶとやま
 昭和の夏の われら等しく

御本尊: 薬師如来
本歌 : 十二神 味方にもてる戦には おのれと心 かぶと山かな
コメント:このあたりは空海が子供の頃によく遊んだところ。泥をこねて仏像を造っていたというから恐れ入る。でもそれは伝説で、やっぱり大地を駆け回ったり、川や海で泳いだり、虫をつかまえたり、カブトムシを互いに戦わせたりしていたんだろうなあ。(カブトムシが平安初期に日本いたのか不明)
【次の札所まで1.6㌔】


甲山寺山門
山門


甲山寺大師堂
大師堂


75への道(仙遊寺古跡)
仙遊寺
大師は幼い頃ここで泥をこねて仏像を作って遊んだという。
だだっ広く殺風景な印象だが、老朽化した古いお堂を解体して、
新築したばかりとの由。



75番札所: 五岳山 善通寺 (ごがくざん ぜんつうじ)

75番
 善く通る 慈悲深き声 耳にして
 冥き道にも 光明を見る

御本尊: 薬師如来
本歌 : 我れ住まば よも消えはてじ善通寺 深き誓いの 法のともしび
コメント: 88札所の中心をあげるなら、やはりここになろう。何と言っても弘法大師生誕の地(佐伯家の邸があった)なのだ。広い境内、立派なお堂の数々、五重塔、宝物館、多くの参拝客。心なしか大気の中にも聖なる気配が感じられた。御影堂の地下には暗闇をめぐる約100メートルの「戒壇めぐり」がある。その最奥で聞いた弘法大師の声(骨格から想定されたモンタージュ・ボイス)は雅量に富んで耳に心地よかった。
【次の札所まで12.5㌔】


善通寺大師堂
大師堂
この地下に戒壇めぐりがある


善通寺金堂(本堂)
本堂


善通寺五重塔2
五重塔が立つ広い境内は京都か奈良の古刹のよう


善通寺南大門
山門
74番から来ると、寺の後ろから入って前から出る形になる


善通寺駅の看板
JR土讃線・善通寺駅の看板


こんぴらさん入口
善通寺駅からこんぴらさんまでは歩いて90分くらい
楽勝!



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香川と言えばうどん
この店で「じゃこ天・かきあげ・かけうどん750円」を食べた


こんぴらさん参道
この日は秋晴れの祝日(勤労感謝の日)
賑わいでおりました


こんぴらさん参道2
本宮までは785段の階段を上る
楽勝!
鍛えられた脚力を実感


こんぴらさん本宮
本宮


金比羅神社ご朱印


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本宮からの風景
善通寺市が一望のもとに



別格17番札所: 五穀山 神野寺(ごこくさん かんのじ)

17番
 かみのわざと 思うほかなき まんのうの
 池のほとりに けふを寿ぐ 

ご本尊: 薬師如来
本歌 : ちまちだに いまもそそぎて のりのしの 恵みあふるる 満濃の大池
コメント: 空海の為した最大の救民事業は、決壊を繰り返していた満濃池の修築であった。周囲約20km、貯水量1,540万tの灌漑用の水がめは、池というより湖の雄大さ。湖畔の蒼き連山、紅葉の樹々、瑠璃色の湖面、美しく穏やかな光景は、ここまでの遍路をねぎらってくれるようであった。今日も良い一日だった。
【次の札所まで13.8㌔】


神野寺2
神野寺


まんのう池2
まんのう池
灌漑用ため池としては日本最大
国の名勝にも指定されている


まんのう池3
神野神社境内よりまんのう池を望む


まんのう池




四国の白地図第16回

CraftMAPの白地図を使用しています。より詳しい四国地図を見たい方は、こちら(地図蔵)を参照ください。  




次回予告
弘法大師の母の里に行きます