2018年9月下旬のある日、四国遍路88札所と別格20札所、あわせて108の霊場を歩いてめぐる旅に出た。これはその記録である。
各札所には御詠歌と呼ばれる短歌がある。お寺の名前を歌の中に盛り込み、法の尊さや御仏のありがたさを説いたものが多い。
ここでは、やはり寺の名前を盛り込みながら、道中の思い出や札所の印象などをオリジナル御詠歌にして詠んでみた。
【香川県】
おだやかな志度の海、カキの養殖が盛ん
道の駅で食べたハマチ漬丼がうまかった
道の駅で食べたハマチ漬丼がうまかった
平賀源内
こんな男、なかなかいない
こんな男、なかなかいない
86番札所: 補陀洛山 志度寺 (ふだらくざん しどじ)
御本尊: 十一面観音菩薩
本歌 : いざさらば 今宵は ここに 志度の寺 いのりの声を 耳にふれつつ
コメント: 当地は江戸時代の万能の天才・平賀源内の生まれ故郷。生家は資料館になっている。源内は、発明家(エレキテル、土用のうなぎ等)であり、博物学者であり、文筆家であり、医者であり、男色家であり、人殺しであった。志度寺の境内に参り墓がある。(実際に葬られている墓は東京都台東区橋場にある)【次の札所まで7.0㌔】
山門
境内は樹木に覆われ、ちょっとした迷路のよう
大師堂
源内焼とは源内の指導によって当地で製作された三彩の陶磁器
こちらはもちろんお菓子である。黄身アンを包んだ焼き饅頭。
畑中の家にカラスがしきりにたかり騒いでいた
何かあったのだろうか?
長尾寺への道で見かけたマンホール
87番札所: 補陀洛山 長尾寺 (ふだらくざん ながおじ)
御本尊: 聖観世音菩薩
本歌 : あしびきの 山鳥の尾の 長尾寺 秋の夜すがら み名をとなえよ
コメント: この札所は、源義経の愛妾であった静御前が出家したところなのだが、それよりも付近のマンホールに刻まれていた「かぐや姫のふる里長尾」というのが気になった。納経所の人に聞いてもいわれを知らなかった。『竹取物語』にはたしかに讃岐造(さぬきのみやつこ)と呼ばれる翁が登場する。そして長尾は竹細工で有名な地区だそうである。【次の札所まで33.9㌔】
広々とした境内
ついにこの道しるべが現れた!
前山ダム
このあたりも池が多い
前山おへんろ交流サロン
結願間近の遍路たちが休息し、遍路について学び、交流するところ
「遍路大使任命書」や記念バッジ、札所を映したDVDなどをいただいた
ここで83番一宮寺に行く途中で会った韓国人チュウさんと再会
結願間近の遍路たちが休息し、遍路について学び、交流するところ
「遍路大使任命書」や記念バッジ、札所を映したDVDなどをいただいた
ここで83番一宮寺に行く途中で会った韓国人チュウさんと再会
館内には、四国霊場のジオラマ、江戸時代の紀行本や古地図、
古い納め札や納経帳、曼荼羅掛け軸など、豊富な資料がある
古い納め札や納経帳、曼荼羅掛け軸など、豊富な資料がある
チュウさんは最後の難関、女体山(774m)を超えるルートを行く
さよなら、チュウさん。そして、ありがとう!
さよなら、チュウさん。そして、ありがとう!
女体山を迂回して88番へ行く道との分岐
別格打ちは真っすぐ進む
香川県三木市と徳島県美馬市の境界
別格20番は二県の境界上にある
別格20番は二県の境界上にある
塩江温泉郷(香川県高松市)の落合橋
橋の向こうに見える立派なホテルは一年前(2017)に倒産
橋の向こうに見える立派なホテルは一年前(2017)に倒産
昔懐かしい風情の赤松旅館に宿をとった
食堂もやっていて、自家製チャーシューを使ったチャー丼は絶品の味
とても仲の良いご夫婦で経営、二人とも良い人だったな
早朝の内場ダム付近
視界がきくのは3メートル先まで
視界がきくのは3メートル先まで
山道(六甲天満原林道)に入ったら霧が晴れてきた
頂上の大瀧寺まで、なだらかな傾斜の舗装路が続くので
疲れることはない。が、山の上は結構寒かった。
思えば、もう11月も終わり。
思えば、もう11月も終わり。
西照神社
神仏分離前は大瀧寺と一体だった。
主祭神は月夜見大神(ツキヨミノミコト)、アマテラスの弟である。
主祭神は月夜見大神(ツキヨミノミコト)、アマテラスの弟である。
別格20番札所: 福大山 大瀧寺(ふくだいさん おおたきじ)
ご本尊: 西照大権現
本歌 : 霊峰の 岩間にひらく 法の道 厄をながして 衆生ぞすくわる
コメント: 標高910mは66番雲辺寺につぐ高さ。麓の塩江温泉に宿をとり、往復に一日かけた。早朝の内場ダム付近はまさに五里霧中で数メートル先も見えず。なのに不思議と怖くなかった。参拝を済ませた午後、登って来た山道を下ってゆくと、唖然とするほど見事な景色が目の前に広がった。このルートを勧めてくれた地元の方に感謝。【次の札所まで18.5㌔】
別格20札所を打ち、結願す
(西照神社ともに住所は徳島県美馬市)
(西照神社ともに住所は徳島県美馬市)
途中にあるお墓の観音様
麓まで下りた所で出会った見事な景観!
内場川を堰き止めてできた内場湖
内場川を堰き止めてできた内場湖
内場ダム
今朝はこの美しく雄大な景色が周囲に広がっているのを
まったく知らずに歩いていた。
なんだか自分の人生を象徴するような・・・・・
まったく知らずに歩いていた。
なんだか自分の人生を象徴するような・・・・・
塩江温泉郷に帰還
翌朝午前6時に宿を発った
来た道を戻る。寒い。
来た道を戻る。寒い。
88番大窪寺への分岐にある「多和産直 結願の郷」
2012年3月閉校となった多和小学校の跡地を利用した施設
最後の道しるべ
あとは林の中の一本道
あとは林の中の一本道
前方に女体山が見えてきた
88番札所: 医王山 大窪寺(いおうざん おおくぼじ)
御本尊: 薬師如来
本歌 : なむ薬師 諸病なかれと願いつつ 詣れる人は 大窪の寺
コメント: 朝暗いうちに塩江温泉を出発。外気温は1度だった。思えば、春夏秋冬すべての気候を体験するような遍路だった。はじめの頃たくさんいた遍路仲間も、高知・愛媛と進むごとに少なくなって、香川では一日に数名しか見なかった。最後はお大師様と同行二人。本堂の後ろの女体山がやさしく迎えてくれた。【第7番札所まで26.5㌔】