2015年
99分

 四国遍路札所第57番永福寺住職・白川密成の書いた同名のエッセイを映画化したもの。
 新人住職の戸惑いや苦悩、奮闘、そして成長がユーモラスなタッチで描かれている。

 監督の真壁幸紀(まかべゆきのり、1984年生)は本作が長編映画デビューとのこと。若干稚拙なところは見受けられるものの、丁寧な心のこもった演出でカバーしている。
 役者では、主演の僧侶役の伊藤淳史、檀家の長老役のイッセー尾形、そして母親役の松田美由紀が好演である。
 
 何と言っても、実際の永福寺とその周辺でロケしたことが、この作品の最大の魅力である。
 四国(愛媛今治)の穏やかな景色や、お遍路さんが立ち寄る札所の風景が、作品のリアリティを底支えし、先祖伝来の素朴な信仰が根付く土地柄を映し出している。
 むろん、ソルティにとっては懐旧の情このうえない。


57番栄福寺1
永福寺境内

 
栄福寺周囲
お寺の周辺風景


栄福寺池
お寺近くの犬塚池


 本作を見れば、檀家寺というのが、地域の人々にとっての心の拠り所であり、困ったときのサポートセンターであり、生老病死に関わる学びと記録と実践の場であることがわかる。
 さしずめ、住職は村のカウンセラーであり、ソーシャルワーカーであり、魂の主治医なのであろう。
 
 イッセー尾形演じる檀家の長老のセリフが含蓄あった。
 「場を作ればいいというものじゃない。人は場に集まるのではない。人は人に集まるんだ」
 

 
おすすめ度 : ★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損