2013年アメリカ
98分
ウディ・アレンを観るのは久しぶり。
この監督は70~80年代、都会で暮らす大人の女性のオシャレな恋愛コメディを連発して、一世を風靡した。
スクリーンの中ではいつも、ミア・ファローやダイアン・キートンといったアメリカンな美女たちが、フランス映画のヒロインのように饒舌な自分語りをしていた。
ソルティの中では、バブル時代の香りをまとった“ちょっと時代遅れ”の監督といったイメージがあるのだが、今なおこうして質の高い作品を発表し続けている。
テーマやスタイルこそ変化に乏しく、悪く言えばマンネリなのだが、この作品が示すようにケイト・ブランシェットのような名女優と組むと、俄然センスの輝く一級品となる。
偉大な監督の一人であるのは間違いない。
偉大な監督の一人であるのは間違いない。
ケイト・ブランシェットは、この作品で主演女優賞を総ナメにした。
それも納得の天才的演技である。
『あるスキャンダルの覚え書き』(2007年)でも思ったが、彼女は演じるキャラクターの癖やら姿勢やら目つきや笑い方まで作り上げてしまう。
ケイト・ブランシェットという人格がどこかに隠れて、別のキャラクターが登場する。
一種の憑依か、多重人格のようにすら思える。
この『ブルージャスミン』は、優雅な暮らしを享受していたセレブの女性ジャスミンが、夫の逮捕と自殺がもとですべてを失い、一転、文無しの居候の身に追いやられる話である。
昔日の栄華が忘れられないジャスミンは、セレブ生活で身につけた習慣やプライドを捨てられず、現実的でない不相応な夢ばかり描いている。
ケイト・ブランシェットは、セレブ時代のジャスミンと転落後のジャスミンを完璧に演じ分けているばかりでなく、どちらの時期にあっても共通して存在しているジャスミンの生来の不安定な気質を見事に表現している。
それは、幼い頃に両親を失い、里親に育てられたジャスミンの成育環境にまで思いをいたさざるをえないほどの深みある表現である。(その点では、ジャスミンと同じ里親のもとで育てられた血のつながっていない妹ジンジャーを演じるサリー・ホーキンスも、同様に素晴らしい)
であればこそ、観る者は、ワガママで見栄っ張りで見るからに“イタい”女であるジャスミンを愛おしく感じるのである。
であればこそ、観る者は、ワガママで見栄っ張りで見るからに“イタい”女であるジャスミンを愛おしく感じるのである。
少女時代のジャスミンの姿、あるいは本作のラストで、居候していた妹の家をなんの当てもなしに飛び出したあとのジャスミンの姿は、かなり悲惨で不幸なものであろう。
そこまで描くともはやコメディの枠からはみ出して、暗く重いドラマになってしまう。
ウディ・アレンはいつもそこまでは追わない。
そこが、「バブルの香り」と言いたくなるゆえんである。
おすすめ度 : ★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
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★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
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