2018年秋に四国歩き遍路をしたときに、香川県のJR多度津駅前にあるホテルトヨタに泊まった。
この駅は、別格17番神野寺(満濃池)、金毘羅さま、75番善通寺、76番金倉寺といったJR土讃線に沿った縦の札所ラインと、別格18番海岸寺、77番道隆寺、78番郷昭寺、79番天皇寺、80番国分寺といったJR予讃線に沿った瀬戸内海沿いの横の札所ラインが交わる地点にあり、歩き遍路にしてみれば、一つの章を終えて次の新たな章が始まる中継点――みたいなイメージがある。
満濃池からの縦のラインを打ち終わり、多度津駅のコインロッカーに大きな荷物を預け、3キロほど離れた別格18番海岸寺を打ち戻り(往復)し、「もう今日はここらが限界」とホテルにチェックインした。
シャワーを浴びて一服し、「さあ夕食」と思ったが、あいにくホテルの食堂は閉まっていた。
ならば、駅構内のコンビニで弁当でも買ってこようかと、夕暮れの駅前広場を横切っていると、線路沿いの小屋の壁に「食堂」とだけ書かれた看板を見つけた。
矢印にしたがって奥へ進むと、「日替り定食500円」と書かれた札が入り口に貼ってある。
場所が場所だけに、体裁が体裁だけに、おそらくJR職員のための食堂なのだろうと見当がついた。
こういう所は、“安くてボリュームたっぷり”と相場が決まっている。
ここで夕食をとることにした。
期待どおりボリューミイだった。
味は普通だが、讃岐名物のうどん、揚げ物3点、おにぎりと稲荷ずし、これで500円なら大満足である。
ずいぶんとエネルギーをもらった。
開店したばかりで店内は空いていたが、制服姿のJR職員のほかに、近所の親子連れらしきも見られ、地元民に愛されているのだろうなあと思った。
よもやここが、鉄道ファンでは有名な“JR多度津駅構内食堂”であるとは知らなんだ。
JR四国の多度津駅の構内食堂(香川県多度津町栄町3丁目)が3月末で閉店することがわかった。乗務員や駅員らのための「社員食堂」だが、四国の鉄道発祥の地とも言われる拠点の駅構内にあり、鉄道ファンや地域住民にも長年愛された。JR四国は建物の老朽化が理由と説明しているが、関係者からは惜しむ声が上がっている。(中略)
食堂の裏手には、れんが造りの給水塔がある。国の登録有形文化財に指定されている、この大正期の建造物などをカメラに収め、食堂にも立ち寄る全国各地からの鉄道ファンも後を絶たない。(朝日新聞デジタル 令和3年1月23日の記事より)
上の写真の食堂の奥に見える煙突のようなのが給水塔らしい。
この給水塔も壊されてしまうのかな?
くちくなった腹を撫でながら駅前広場をホテルへ向かうと、夕映えの讃岐の山々が翌日の快晴を告げていた。
「明日も元気に歩くぞ!」
そう思った。
「明日も元気に歩くぞ!」
そう思った。