2018年日本、フランス
119分
先日、第71回ベルリン国際映画祭の審査員グランプリを『偶然と想像』で受賞した濱口竜介監督の商業映画デビュー作であり、蓮實重彦が『見るレッスン 映画史特別講義』で称賛していた監督&映画であり、そして何と言っても、不倫で一躍時の人となった東出昌大と唐田えりかが恋人役で共演し、つき合うきっかけを作ってしまった罪深い(笑)映画である。
不倫騒動についてはこれと言った関心も感想も持たないソルティであるが、本作を見て、東出が唐田に夢中になるのも無理ないなあと率直に思った。
それくらい唐田は女優として素晴らしい素材である。
撮影中に生まれた東出に対する恋心が、ここでの唐田のリアリティある演技と表情を引き出した可能性はあると思うが、このままフェイドアウトさせてしまうのは日本映画界の大損失――と言っても過言ではない魅力を感じた。声もすごくいい。
この人の駒子@『雪国』は観たいかも・・・・。
対する東出も難しい一人二役(麦と亮平)を無難にこなして、ただのイケメン俳優ではないところを証明している。こちらも頑張ってほしい。
この役は若い時のオダギリジョーにやってほしかった。
濱口監督の力量と才能は最初の数カットで分かった。
まさに映画そのもの、蓮實が持ち上げるのも無理はない。
画面を構成する生来の感覚が備わっている。後半、朝子が亮平を追っかけながら土手の上を走るところを上方からの超ロングショットで押さえたシーンなど、身の内を愉悦が沸き起こった。
物語としての緩急のつけ方も巧みで、どうってことない日常シーンに波風立ててサスペンス仕立てにしてしまう。亮平と朝子が互いの友人合わせて4人で一緒に食事するシーンで、いきなり演劇論バトルが始まるところなど、思わず手に汗握ってしまった。濱口がジョン・カサベテスを好きだというのも頷ける。
物語としての緩急のつけ方も巧みで、どうってことない日常シーンに波風立ててサスペンス仕立てにしてしまう。亮平と朝子が互いの友人合わせて4人で一緒に食事するシーンで、いきなり演劇論バトルが始まるところなど、思わず手に汗握ってしまった。濱口がジョン・カサベテスを好きだというのも頷ける。
東日本大震災が出てくるので2000年以降の話と分かるが、画面の質感から80年代の映画を観ているような気になった。森崎東監督『夢見通りの人々』、相米慎二監督『台風クラブ』、周防正行監督の『ファンシーダンス』、あるいは一連の日活ロマンポルノ・・・・、そのあたりの匂いをふと思い出した。
ちなみに本作の最優秀演技賞は、間違いなく猫である。
おすすめ度 :★★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損