1936年日活
87分、白黒

 河内山宗俊(宗春とも)は実在した江戸時代後期の茶坊主にして侠客。

茶坊主とは、将軍や大名の周囲で、茶の湯の手配や給仕、来訪者の案内接待をはじめ、城中のあらゆる雑用に従事した。刀を帯びず、また剃髪していたため「坊主」と呼ばれているが僧ではなく、武士階級に属する。(ウィキペディア「茶坊主」より)

 実際はかなりの悪党だったらしいが、講談や歌舞伎の世界では庶民のヒーロー的存在に祭り上げられた。
 この役を河原崎長十郎が、妻・お静を山岸しづ江が演じている。
 この二人は溝口健二監督『元禄忠臣蔵』でも夫婦役だったが、実生活でもパートナーであった。
 ちなみに、山岸しづ江は岩下志麻の叔母にあたる。

 河内山宗俊に助けられる町娘・お浪を16歳の原節子が演じている。
 映画デビュー間もない原の初々しくも凛とした美貌が光る。
 口舌も可愛らしくて品がある。
 この撮影現場を見学に来たことが、アーノルド・ファンクが原を日独合作映画『新しき土』のヒロインに抜擢するきっかけとなったと言われる。
 「さもあらん」と頷ける原の万国共通のオヤジ殺しの魅力である。

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 音楽は西悟郎という人が担当している。
 驚いたことに、クライマックスのチャンバラ場面でチャイコフスキーの『ロミオとジュリエット』を用いている。
 なんとキッチュな!

 もう一つの驚きは、お浪を吉原遊郭に売ろうと謀る女衒役で加東大介が出ている。
 当時(25歳頃)は市川莚司という芸名だったようだ。
 実に息長く活躍した役者と感嘆した。
 特徴的な顔立ちと演技の巧さは後年のそれと変わりない。
 


おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損