2018年イスラエル
95分

 イスラエル(ユダヤ教圏)のホラー映画を観るのは初めて。
 舞台は17世紀中期のユダヤ系コミュニティ。
 いまだ迷信がはびこる時代である。

 『アンダー・ザ・シャドウ』(ババク・アンバリ監督、2018)に見るように、イスラム教圏の代表的なモンスターと言えば精霊ジンであるが、ユダヤ教でそれに相当するのがゴーレムである。
 ウィキによるとゴーレムは、「ユダヤ教の伝承に登場する自分で動く泥人形」で「ヘブライ語で胎児を意味する」。また、「作った主人の命令だけを忠実に実行する」という。
 なんとなく既視感があるのだが、それはドラクエに登場するキャラの一つだからではなく(ソルティはドラクエをやったことがない)、子供の頃に好んで観た大映の『大魔神』を思い出すからなのだ。
 それもそのはず、大魔神は、チェコスロバキア映画の『巨人ゴーレム』(1936年、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督)をヒントに制作されたのであった。
 『ハクション大魔王』のランプの精と言い、『バビル二世』のポセイドンと言い、スフィンクスデザインの『ジャイアント・ロボ』と言い、結構幼い頃に夢中になって見たテレビ漫画や映画の中に、国際的なエッセンスがたくし込まれていたのを思い知る。


ゴーレム
ゴーレム


 この映画のミソは、ゴーレムと言う言葉から想像される巨大な泥人形が出てくるかわりに、可愛らしい少年がその正体であるところ。
 しかも、その少年ゴーレムをカバラの秘術によって創造したのは、幼い息子を水難事故で亡くした女、ハンナなのである。 
 少年ゴーレムはハンナと一心同体で、ハンナの思いを感じて行動し、ハンナの言うことだけを素直に聞く。

 そのせいか、この作品はユダヤ教文化圏の家父長的で男尊女卑の社会に対する一種のアンチテーゼのようにも読める。
 「女の使命は子供を産むことだ。それをしない奴は神に反している」なんて、どっかの国の国会議員が地方講演でポロリと口にしてあとからネット炎上しそうなセリフが出てくる。
 そんな言葉で夫や義父に日々責め立てられているハンナが、泥から少年ゴーレムを造り上げ、村を責めてくる外敵を追い払い、男たちを見返すのである。
 女子供の勝利だ。

 しかるに最後は、外敵を全滅させた少年ゴーレムはコントロールが効かなくなって、村人たちもまた手に掛けてしまう。
 ハンナは泣く泣く少年ゴーレムの口から呪文の書かれた羊皮紙を取り出し、少年をあとかたもなく砂に返し、生き残った夫と共に灰燼と化した村をあとにする。

 ラストシーン。
 捨てられた羊皮紙を拾ったのは、やはり生き残った少女。
 女から女へ、意志が継承される。
 このフェミニズムっぽさ、やはり現代映画である。



おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
★     読み損、観て損、聴き損