2021年幻冬舎文庫

 著者は1983年生まれ。フィンランド人と結婚、ヘルシンキ在住の2児の母。
 タイトルに「やっぱり」とあるのは、『ほんとはかわいくないフィンランド』という前著があるから。
 亭主との馴れ初めや移住の話なんかは、おそらくそっちに書かれているのだろう。(図書館に置いてなかった)

 ソルティは意外とこういった異国生活こぼれ話的なエッセイが好きである。
 日本との風習や制度の違い、ものの考え方の違い、いわゆる“お国柄”を知るのは面白い。
 とりわけ、女性の書き手によるものが生活者のリアリティを感じさせて、その国で住むとはどういうことかを目に見えるように伝えてくれる。
 これが男性の書き手となると、どうしても政治論や文化論といったお堅い一般論になりがちで、いったいに無味乾燥なんである。
 本書も、フィンランドの食風景や保育園事情、休暇の過ごし方、家の売り買いのあれこれなど、きわめて日常的なテーマがざっくばらんに語られ、肩の凝らない楽しい読み物になっている。
 フィンランドをモチーフとした「それでも」かわいい表紙のイラストが、本書を借りようと思った大きなきっかけになった。
 
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イラストレーター赤羽美和による

 フィンランドと言えば、

 サウナ、キシリトール、森林、湖、シベリウス高福祉、ムーミン、白夜、オーロラ、オルキルオトのオンカロ・・・・

あたりが常套フレーズであるが、本書を読んでこれに新たにいくつか加わった。

 高い離婚率、冷凍庫のブルーベリー、不味いコーヒー、牛乳フリーク、フィンランドじわ。

 中で離婚についていえば、なんと二組に一組は離婚するという!(日本は三組に一組)
 フィンランドは事実婚が多いので、事実婚カップルも含めると、生涯離婚をしないで添い遂げるカップルのほうが圧倒的に少ないということになる。
 住居を変えるのと同じくらいの気軽さで離婚するらしい。(フィンランドでは“終の棲家”という考え方はあまりないそうだ)

 この背景には、西洋人の個人主義とか忍耐力のなさ(というより忍耐を美徳とはとらえない文化)とかいろいろあるのだろうが、「やっぱり」看過できないのは男女平等と高福祉であろう。

 日本で女性が離婚をためらう一番の理由は、離婚後の生活の厳しさを思ってしまうからである。
 旦那の稼ぎに頼れなくなり、かと言って小さな子供を抱えた女性が就職先を見つけるのは難しい。
 子供を預けようにも保育園を探すのも難しい。
 別れた元亭主の7割以上が養育費をきちんと払ってくれない。
 子供が手にかからなくなるまでの、あるいは必要十分な収入ある仕事が見つかるまでの社会保障があるかと言えば、これまたない。
 四面楚歌である。
 離婚したくても簡単にはできない檻のような(鬼のような?)システムなんである。


象と檻


 別に離婚を勧めているわけではないけれど、生理的に一緒にいられなくなった相手と一つ屋根の下で暮らし続けるのは、どう考えてもハッピーではない。
 互いにとっても、子供にとっても。

 先進国で最低の日本の男女平等ランキング(フィンランドはアイスランドに次いで2位)といまの社会保障制度や予算配分のあり方、これらは女性が「結婚してもロクなことがない」、「子供を産んでもロクなことがない」と思わせる結果を生み、つまるところ我が国の出生率の低下を招く。
 我が国の与党の力ある層は、明治民法下の儒教的な「家」制度をかたくなに守ることに執念を燃やしているように見えるけれど、それを推し進めれば進めるほど、国民は結婚や子育てから遠ざかってしまい、結局は「家」の弱体と消滅を招いてしまうということが、どうやら分かっていない。
 選択的男女別姓制度に関する議論にもそれが表れている。
 男女別姓をすんなり認めたほうが、女性にとって結婚することへの敷居が低くなるのだから、「家」を守りたい派にとっては結構なお話だろうに・・・・。
 
 ゲイであるソルティにとってはどうでもいい話とさらりと逃げたいところだが、出生率の低下は老後の年金生活に影響してくるので、困ったものだ。
 ただ、今回のコロナ騒動で明らかになったけれど、国家の社会保障費の供出は「できない」のではなく「やりたくなかった」のだ。
 ホント国民を馬鹿にしている。


おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損