2006年北冬書房
初出2001~2006年『幻燈』
表題作含み全11編

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 一瞬、「みうらじゅん」かと思った。
 1954(昭和29)年大阪生まれの女性漫画家である。
 その存在をはじめて知った。
 いや、その非在をはじめて知った。
 2019年にがんで亡くなっている。
 
 エッセイ風漫画といった趣きで、収録されている11編のうちいくつかは少女時代の自らの記憶がネタになっている。『ちびまるこちゃん』のさくらももことの類似を思った。
 ただ、ちびまる子ちゃん=さくらももこ(1965-2018)の活躍する世界は昭和40年代の静岡県であるのに対し、少女うらたじゅんが生きる世界は昭和30年代の大阪近辺。
 この違いが結構大きくて、戦争の傷跡や貧困や公害のエピソードが、少女の牧歌的な日常にふと影を落としている。
 セックス、挫折、老い、死などをテーマとするうらたじゅんの作品は明らかに大人向けであり、最終的には子供向けギャグ漫画になってしまった『ちびまる子ちゃん』とは一線を画する。
 
 花、木、鳥、虫など自然を描くのが巧みなことも、うらたじゅんの特徴であろう。
 日本の美しい春夏秋冬をバックに、ちっぽけで愚かだけれど愛おしい無名の人々のドラマが展開している。
 西岸良平『三丁目の夕日』のような庶民性もあれば、尾崎翠『第七官界彷徨』のような女性ならではの不思議な浮揚感もある。
 細く柔らかな描線、めくるめく花鳥風月、時折読者にひたと向けられる少女の潤んだつぶらな瞳・・・。
 どこかで見たような気がずっとしていた。
 
 末尾を飾る『眠れる海の城』(傑作!)を読み終わって、ハタと気づいた。
 大島弓子だ!
 うらたじゅんは少女を脱皮した大島弓子なのだ。
 


おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損