2014年世界文化社

 上質の紙に板のようにがっちりしたハードカバー、パリを背景にしたエレガントな二大美人女優のカラー写真も豊富なゴージャスなつくり。
 痩せても枯れても世界文化社だ。
 まあ、昭和の銀幕を彩った押しも押されもせぬスターの対談とあらば、これくらいの贅沢こそふさわしかろう。

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 横浜での最初の対談(2009年10月)、パリでの2回目の対談(2013年6月)、横浜での3回目の対談(2013年10月)が掲載されている。
 この間にあった未曽有の事件と言えば、東日本大震災と福島原発事故である。
 二人の会話は、女優同士の対談にありがちな芸能や恋バナ、結婚や家庭の話、それぞれの人生観披露などにとどまらず、原発や戦争、ボランティア、外交問題や異文化共生の話などにまで及び、二大女優の社会的視野の広さと問題意識の高さと行動力を知らしめる。
 二人とも美しいだけでなく、賢くて、おのれをしっかり持っている。

 岸惠子は1932年生まれ。吉永小百合は1945年生まれ。
 13歳違いである。
 対談当時、岸は80歳を超えていたわけだが、まったくそうは見えない。
 いいとこ60代である。
 ファッショナブルでスタイルも良く、パリの街に溶け込んでいる。
 否、パリの街をより優雅に見せる点景と化している。
 が、会話ではむしろ江戸っ子のようにさばさばした思い切りのいい性格がうかがえる。
 
 吉永小百合は60代半ば。
 これまた若く美しい。
 洋装ではさすがに本場仕込みの大先輩にかなわないと思ったのか、着物で通している。
 これは正解。
 日本的な美がパリの街に輝いているのを見るのは誇らしい。
 
 紙面から反原発や憲法9条護持の活動をしている吉永の思いが生半可なものじゃないことが伝わってくる。一途な理想家。
 一方、「ペシミストじゃないけどリアリスト」という岸は、自らがジャーナリストとして世界各地をめぐり見聞した経験をもとに、吉永の認識の甘さを指摘する。

吉永 21世紀になって、いろいろな紛争がありますが、みんなが「地球は一つの国」という意識を持つようになることが必要ですよね。
 ならないわよ、小百合ちゃん。無理。人間もいろいろだもの。・・・・(中略)・・・・残念ながら、私は紛争はなくならないと思うの。本当の意味での世界平和なんてあるのかしら?と私は疑ってるの。人間は学ばないんだもの。歴史から。忘れるんですもの。忘れて、繰り返す。

 この認識の違いが、まさに二人の女優の芸質の差を表しているようで興味深い。
 『おとうと』(1960)のげん(岸惠子)と『キューポラのある街』のじゅんの差だ。
 あるいはまた、二人の唯一の共演作『細雪』(1988)の長女鶴子と三女雪子の差だ。



おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損