1960年大映
100分、カラー

 3話から成るオムニバス映画。
 タイトルの「女経」とはどういう意味かと思ったら、なんと!

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第一話 「耳を噛みたがる女」 (監督:増村保造 撮影:村井博)
 トップバッターは若尾文子。
 だるま船に暮らす色っぽくしたたかなホステス紀美を演じている。
 「おんな」を使って男を振り回す、まさに若尾らしい役どころ。
 だるま(達磨)船とは幅が広い木造の和船で、昭和初期頃に貨物の運送に使用されていたが、のちに港湾労働者を中心にその中で水上生活する者が増えていった。
 小栗康平監督の映画『泥の河』(1981)は、大阪の安治川で水上生活する昭和30年代の家族の話を扱っているが、東京でも隅田川で見られたらしい。
 80年代にはなくなったという。
 紀美が最初の婚約者に捨てられたのは、水上生活者であったことによる。
 リアリティを追求する増村演出がここでも光っている。

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若尾文子(公開当時27歳)


第二話「物を高く売りつける女」 (監督:市川崑 撮影:小林節雄)
 掛け値なし「日本一」の美女と謳われた山本富士子が、不動産業界を舞台にやはり「おんな」を武器に詐欺を働く。
 これほどの美女に引っかからない男がいようか。
 カモにされる相手は船越英二、2時間ドラマの帝王・船越英一郎の父親である。
 着物姿の山本の艶やかなこと!
 市川崑の演出は、金田一耕助シリーズを彷彿とする。

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山本富士子(当時29歳)


第三話「恋を忘れていた女」 (監督:吉村公三郎 撮影:宮川一夫)
 ラストを飾るはグランプリ女優の京マチ子
 京都で修学旅行生相手の旅館やバーを営む商売一筋のやり手の女将。
 それが昔の恋人と再会することによって「おんな」を取り戻し変わっていく。
 『羅生門』、『雨月物語』、『破戒』の宮川一夫のカメラとともに、『安城家の舞踏会』でも見せた吉村演出が素晴らしい!
 京マチ子もただ美しいだけでなく、ラストの橋の場面など非常に「おんな」っぽく撮れている。
 3話のうち、これがベスト。

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京マチ子(当時36歳)


 3人の女に共通するのは、美しい外見の裏にある“したたかさとがめつさ”であろう。
 「きれいなバラには棘があるから気をつけよ、ご同輩」というのが男性観客に説く女経の骨子に見える。
 だが、彼女たちの“したたかさとがめつさ”の背景には、男社会で学のない女が一人、身を持ち崩さずに凛として生きていくことの難しさがある。
 枕営業が横行した昭和時代なら特に。
 
 1960年の観客と2021年の視聴者とでは、観るべきものが異なって当たり前。
 またそれを可能にするのが名作と言われるゆえんであろう。



おすすめ度 :★★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損