1934年松竹
77分

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 俗に蒲田調と言われる小市民の日常を切り取ったドラマ。
 島津保次郎(1897-1945)作品を観るのはこれがはじめて。
 二十歳の原節子主演で『嫁ぐ日まで』を撮っている。
 フィルムが残っているならぜひ観たいものだ。
 本作のクレジットでは助監督として豊田四郎と吉村公三郎、撮影の一員として木下惠介の名が上がっている。後進を育てる名人だったのだろう。
 
 出てくる俳優で見知っていたのは、『一人息子』など小津安二郎作品の常連であった飯田蝶子くらい。
 八重役の逢初夢子、岡田嘉子、高杉早苗も名前だけは聞いたことのある伝説の女優といったイメージ。とくに岡田は共演男優との駆け落ちや妻のいる共産主義者とのソ連逃避行など、スキャンダルで名を売った。
 八重の幼馴染で思われ人の恵太郎を演じる大日向伝(おおひなたでん)は、阿部寛のような正統派美男子。のちにブラジルに渡って牧場経営し巨万の富を築いたというから面白い。
 当時の役者の奔放さ。 
 
 昭和初期の東京近郊の住宅地の風景がなんともゆかしい。
 午後から銀座に映画を見に行ったり、近くに大きな土手があるところからして、隅田川か荒川近辺なのではないかと思うのだが・・・。

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 大学をさぼって早帰りした恵太郎が自宅の鍵が閉まっているのを見て、隣の八重の家に勝手知ったる我が家のごとく上がり込み、昼食をよばれるシーンがある。
 父親の仕事の関係で大陸行きが決まった八重の家の引っ越しを、恵太郎一家が総出で手伝い、みんなで見送るシーンがある。 
 昭和40年代くらいまでの日本は、東京近郊でもこんなふうだったなあ。


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おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損