2015年創元推理文庫

 アメリカ発ヤングアダルトミステリー。
 17歳のイケメン高校生ジャスパー・デント(ジャズ)が、親友で血友病患者のハウイーや黒人の恋人コニーに助けられながら、地元の街で起こった連続殺人事件の犯人を捜す。
 原題は I HUNT KILLERS「人殺しを捕まえる」
 邦題の由来こそ、この小説のミソである。

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 ジャスパー・デント少年は、124人を惨殺した稀代のシリアルキラーにしてソシオパスであるウィリアム・デント(ビリー) の実の息子であり、幼い頃から父親の手による英才教育(=洗脳)を受けた生粋の“シリアルキラー候補”なのである。
 ジャズは自らの呪われた血としつけが顕在するのと必死に闘いながら、かつ全米にあまねく知られた凶悪犯の息子という境遇と向き合いながら、かつ認知症を発症し奇矯な振る舞いが目につく祖母(ビリーを生み育てたモンスターマザーである)の面倒を一人で見ながら、シリアルキラーの心理を隅々まで知る利点を逆手にとって真犯人を追う。
 
 考えられる限り最悪の育ちと環境にある主人公。
 残酷な手段で若い女性を殺めていくシリアルキラーの出没。

 普通なら重苦しい話になりそうだが、そこはヤングアダルト小説。
 友情や恋愛をからませながらユーモアある筆致で主人公=ヒーローの苦悩と活躍を描いていく。
 捜査を指揮する保安官が十代のビリーに協力を依頼するとか、124人殺しの凶悪犯が死刑にならないでいるとか、しかも簡単に脱獄してしまう施設に収容されているとか、ご都合主義はそこかしこに目立つが、そこはヤングアダルト小説。
 目くじらを立てることもあるまい。
 
 肩の凝らない気楽なミステリーを読みたい向きにはおススメである。
 

 
おすすめ度 :★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損