2020年日本映画
139分
2011年3月に起きた東日本大震災および福島原発事故をテーマにしたドキュメンタリータッチのドラマ。
岩手県大槌で津波被害に遭い両親と弟を失った女子高生が、数年後、震災後に身を寄せていた広島の叔母の家から故郷大槌までヒッチハイクする。
旅の途中で出会う様々な人との交流を描いたロードムービーである。
主役の女子高生ハルを演じるは、モトーラ世理奈というモデル兼俳優。
難しい出ずっぱりの役を熱演している。
ハルに関わる大人たちを演じるは、三浦友和、渡辺真起子、山本未來、西島秀俊、西田敏行といった実力ある役者たち。
そのおかげで、見ごたえある作品に仕上がっている。
ハルが道中出会う人もまた、様々な苦しみや悲しみを抱えていた。
広島で被爆体験をもつ老女、父のない子を産み育てる決意をした妊婦、入管に家族を収容されているクルド人一家、原発事故によって破壊された郷土に残り続ける一家、事故で父親を亡くしたばかりの家出少年。
ハルの抱える苦しみと悲しみが彼らのそれと共振し、自然と彼らの語りを引き出していく。
それによって、両者の間に目に見えない絆が結ばれて、一期一会が果たされていく。
ブッダの説いた「からし種」のエピソードにあるように、悲しみはあらゆる人に分け隔てなくもたらされる万人の軛(くびき)であり、と同時に万人の宝なのだ。
悲しみゆえに人は一つになれる。
悲しみを深く味わえる人ほど、他人と深くつながることができる。
浦河べてるの家についてのドキュメンタリー『治りませんように』(みすず書房)の中で、著者の斉藤道雄はこう記している。
べてるの家には、人間とは苦労するものであり、苦悩する存在なのだという世界観が貫かれている。苦労を取りもどし、悩む力を身につけようとする生き方は、しあわせになることはあってもそれをめざす生き方にはならない。苦労し、悩むことで私たちはこの世界とつながることができる。この現実の世界に生きている人間とつながることができ、人間の歴史へとつながることができる。(斉藤道雄著、みすず書房)
タイトルの意味についてソルティは知らなかった。
「風の電話」は、実際に岩手県上閉伊郡大槌町の浪板海岸のそばにある電話ボックスの愛称。
白い電話ボックスの中に電話線のつながっていない黒電話が置かれていて、亡くなった人と会話できるという。
2011年に大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格さんが自宅の庭に設置して以降、たくさんの人が訪れて、失った縁者の声に耳を傾けている。
2011年に大槌町在住のガーデンデザイナー・佐々木格さんが自宅の庭に設置して以降、たくさんの人が訪れて、失った縁者の声に耳を傾けている。
土台だけの廃墟となった実家を目撃したハルは、帰りの駅で出会った家出少年から風の電話のことを聞いて、共に浪板海岸を訪ねる。
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
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