2018年合同出版

 副題『水色ともちゃんのつれづれ日記』
 タイトル通り、ともちゃんは中学生の時から統合失調症を患い、根拠のない不安や強い自己否定からリストカットや不登校を繰り返し、15歳で精神科入院。
 退院後は精神科デイケアに通ったり、社会復帰(というより社会デビュー)を目指して就労支援を受けたり、興味をもったピアノを習い始めたり、こうして自らの経験を漫画に描きブログ投稿したり・・・。
 統合失調症とのつらく苦しい闘いと、本人がその状態を受け入れ、「この相棒と共生」するようになるまでの日々が、『オバケのQ太郎』に出てくるO次郎(「バケラッタ!」)みたいな可愛いキャラに託されて描かれる。
 1990年生まれとあるから現在21歳か。
 統合失調症患者が書いた闘病記は世界にも珍しく、例外的に『ボクには世界がこう見えていた』(小林和彦著)があるが、十代の当事者によるものはさらに珍しいのではないか。
 その意味で、貴重な症例記録と言えよう。

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 病気に関する解説を主治医の成重竜一郎氏(若宮病院児童精神科医長)が書いている。
 統合失調症について、また患者の内面世界について知り、病気への理解を深めるのに恰好の一冊である。
 
 人の脳は、日々膨大な量の知覚情報や思考の流れを処理しています。通常であればそれらのほとんどは意識されず、必要なものだけを意識に上げて処理するよう自動的に調整されています。視界には入っていても気づかないということが起きるのはそのためです。
 ところが、統合失調症にかかるとどういう理由かは不明ですが、このシステムの働きが悪くなり、普段であれば不要だとみなされ、意識に上らない知覚情報や思考の流れが、部分的に意識されるようになります。その際に、本来意識されないものが意識されてしまうことのつじつまを合わせようとして、脳が勝手な意識づけしてしまうのが“幻覚”であり、“妄想”です。
(成重竜一郎による解説より) 


おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損