1995年松竹配給
123分

 原作は帚木蓬生の同名小説。
 終戦までの日韓併合下、朝鮮から強制的に連れてこられ、筑豊炭田で奴隷のようにこき使われた朝鮮人の物語。
 『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』でも言及されている史実である。

 主演の三國連太郎は本作の演技で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を獲っている。
 「それも当然!」と大いに頷ける渾身の演技で、最初から最後まで三國の表情、喋り、一挙手一投足に魅入られてしまう。
 このレベル、『サンダカン八番娼館』の田中絹代に匹敵する。
 『飢餓海峡』、『切腹』、『親鸞 白い道』、『利休』、TVドラマ『赤い運命』の島崎など、三國には数々の名演、代表作があるけれど、本作の演技が役者人生の一つの頂点をなしているのは間違いあるまい。
 ここに至るには、佐藤浩一もまだまだ伸びしろがある。

 80年代後半にアイドル四天王と言われた南野陽子が、思いがけず、素晴らしい。
 朝鮮人の若者を愛する積極的な後家さんにして、生まれながら二つの祖国をもつことになった男児を女手一人で育てる気丈な母親を、美しくも艶やかに演じている。
 アイドルの演技では全然ない。

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ラブシーンを演じる南野陽子
色っぽいのナンノ・・・
 
 筑豊炭田で朝鮮人をこき使う冷酷無比なる日本人監督に隆大介が扮している。
 ふてぶてしい面構えと鋭い眼光、187㎝のいかつい体躯はまさにはまり役で、作品にリアリティを与えるに十分な存在感を放つ。
 が、ウィキによれば隆大介は在日コリアンだったらしい。
 どのような心境から演じていたのか興味深い。
 
 ほかに永島敏行、樹木希林、白竜、林隆三がしっかりと脇を固めていて、作品の質の高さを担保している。

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父と子の再会シーンにおける林隆三と三國連太郎 

 

おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損