2007年双葉社文庫名作シリーズ
初出
『壁男』1995~1996年
『ブラック・マジック・ウーマン』1979年
『鰯の埋葬』1991年
『会社の幽霊』1992~1993年
『夢の木の下で』1997年
『遠い国から』1978~1998年

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 『暗黒神話』、『自選短編集 彼方より』に次ぐ、3冊目の諸星ワールド参入。
 もうすっかりこの世界の虜となった。

 なんという奇抜な想像力!
 CGのなかった時代、まさに漫画でなければ表現できないモチーフであり発想である。
 その意味で、極めて「漫画的」な作家と言っていいのだろう。
 『彼方より』を読んで、つげ義春、伊藤潤二、赤塚不二夫、永久保貴一などを想起したと書いたけれど、今回は、安部公房(「壁男」の実存的意味)、古賀新一(「ブラック・マジック・ウーマン」のサバト風景)、レイ・ブラッドベリ―(「夢の木の下で」の幻想性)、星新一(「遠い国から」の怪奇と寓話性)などを連想した。
 つまり、読んでいるとなぜか「奇妙でおっかないけれど、どこか懐かしい」といった気分にさせられる。
 それは、悪夢というほどではないけれど、変てこりんな夢を見たときの目覚めの感覚に似ている。
 夢の中では、自分もたまに諸星大二郎になっている。

 CG全盛の現在、『壁男』や『夢の木の下で』あたりは映像化されても面白かろう。
 個人的には『遠い国から』に出てくる、驚くと団子虫のように地べたに丸まってしまう民族ピロン人に笑った。

ダンゴムシ



おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損