1955年日活
115分、白黒

 原作は、井上靖の同名小説。
 青春を過ぎたものの世間的になかなか落ち着かず、それぞれの幸せを求め続ける男女4人(月丘夢路、新珠三千代、三橋達也、三國連太郎)と、すでに老境に差しかかった社会的成功者である男(山村聰)、都合5人が織りなす抑制の効いたメロドラマである。
 “抑制の効いた”というのは、少なくとも「不倫」という言葉が市民権を得た80年代以降なら、平気で肉体関係を持ったであろうような絶好のシチュエーションで、この5人の男女は欲望を抑えるからである。
 たとえば、月丘夢路演じる美しき人妻と三國連太郎演じるやもめのカジカ(鰍)研究家は、お互いに惹かれ合っているにもかかわらず、二人きりになった伊豆の旅館で一線を越えることはない。
 この時代、『天城越え』(by 石川さゆり)はまだ遠い。
 5人の関係は面白いように複雑に入り組んでいるので、もし各々がおのれの欲望に忠実に従って倫を越えてしまえば、ぞっとするような愛憎の修羅場がそこに出現し、来るべき「あした」は地獄となるであろう。
 一線を越えるというハードルは、この時代、まだまだ高かったのである。


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伊豆の海をバックに月丘夢路と三國連太郎

 別に選んでレンタルしたわけではないけれど、ここにも三國連太郎が出ていた。
 男盛り28歳、どのカットを取っても「絵になる」。
 西欧人の血が混じっているのでないかと思うような彫りの深い美形。 
 ジャン・コクトーが観たら、ほうっておかなかったのでは・・・。




おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損