1975年緑豆社
115分、白黒

 在日2世の若者のアイデンティティをめぐる葛藤を描いた青春ドラマ。
 主演は往年のロックバンド、キャロルのジョニー大倉(2014年62歳で没)。
 この映画出演を機に、自身が在日2世(朴雲煥 パク・ウナン)であることをカミングアウトした。
 つまり、演じる本人と役柄とがモロ重なっている。
 演技の上手下手はおいといて、勇気と覚悟と解放感をもって熱い思いを胸に演じているのは確か。
 瑞々しい素朴な表情が光っている。
 映画評論家の町山智浩によると、ジョニー大倉はカミングアウトがきっかけでラジオのレギュラー番組を下ろされたという。
 75年当時、在日をめぐる我が国の状況はそんなものだったのだ。
 
 恋人役の在日の少女を当時19歳の佳那晃子(当時の芸名は大関優子)が演じている。
 なんつー、美少女!
 若き日の松坂慶子似の目鼻立ちのくっきりした高貴な顔立ちは白黒画面に映える。
 デビュー2作目なのに演技も素人臭い感じはなく、ジョニーをリードしている。
 元来備わっているこの風格が、後年『魔界転生』のガラシャ夫人好演につながったのだと納得。
 
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佳那晃子とジョニー大倉


 李学仁監督についてはよく知らないが、白黒映画をここまできれいに効果的に撮れる技術は並ではない。
 構図や光の使い方にも工夫がある。

 本作では、1963年から1979年まで16年に及んだ朴正煕(パク・チョンヒ)政権下での大韓民国の実情が背景をなしている。
 朴大統領は、民主化を弾圧し独裁者と呼ばれた。(その娘は韓国初の女性大統領となったものの不祥事で罷免された朴槿恵 パク・クネである)
 ソルティは韓国の政治史についてまったく門外漢なのだが、小学生だった当時、『ユンボキの日記』という韓国の貧しい少年の物語を読んで、あまりの悲惨さに胸が詰まったのを覚えている。
 チューイングガムを売ってつくったお金でうどん一玉を買い、病弱の父親と3人の弟妹で分け合うとか、そんな話だった・・・・
 思えば、あれが朝鮮文化との最初の出会いだった。




おすすめ度 :★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損