2019年ブラジル、フランス
131分、ポルトガル語、英語

 『ボーダー 二つの世界』(2018)に奉った「ウミウシもの」という新ジャンル枠を、本作にも捧げたい。
「いったいこれはなんの映画なの?」という、戸惑いと驚きと奇天烈感に満たされる作品である。
 宗教(カルト)コミュニティ映画のように始まり、LGBTQ映画のような多様性のニュアンスが立ち込め、それが不意に犯罪・スプラッタ映画の残虐シーンに突入し、サイコパスホラーの色を帯び、ガンマンが跋扈する西部劇のような展開を経て、村人総出の百姓一揆のごとき戦闘バトルでクライマックスを迎える。
 悪徳政治家の卑劣な企みから「おらが村」を守りぬいた住民たちの勇気と団結の物語と言えば聞こえはいいが、村人の中には世間で「殺しのプロ」と恐れられる凶悪犯はじめ前科者、娼婦や娼夫、オカマやヌーディストもあたりまえに(なんら差別を受けずに)暮らしていて、勧善懲悪とも言いかねる。
 なんとも不思議な味わいの映画。
 
 80年代LGBT映画の傑作『蜘蛛女のキス』で世界デビューした往年の美女ソニア・ブラガが、無頼なレズビアンの医師役で出演。圧倒的存在感をみせている。
 
 
蜘蛛女のキス
『蜘蛛女のキス』におけるソニア・ブラガ



おすすめ度 :★★★

★★★★★ 
もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損