2005年シネカノンほか制作
119分
日本語、朝鮮語

 1968年の京都が舞台の青春恋愛ドラマ。
 朝鮮高校の番長リ・アンソン(=高岡蒼佑)の可愛い妹リ・キョンジャ(=沢尻エリカ)と、鴨川を間にはさみ事あれば対立する日本の高校の真面目な一生徒・松山康介(=塩谷瞬)の「ロミオとジュリエット」まがいの、甘酸っぱくも苦い恋愛が描かれる。
 もちろん、背景に横たわるのは近代以降の日本による半島侵略であり、在日コリアンの受けてきた苦難の歴史である。

 容易には語りえない重苦しい題材を扱いながら、笑いと涙とアクションシーンを散りばめ、全体に爽やかなエンターテインメントに仕上げた井筒監督の手腕が光る。
 この監督のなによりの凄さは、出演するすべての役者の良さを存分に引き出してしまうところであろう。
 3人の主役――沢尻エリカのキュートな美しさ、高岡蒼佑のニヒルな優しさ、塩谷瞬の朴訥としたひたむきさ――はむろんのこと、アンソンの弟分役の尾上寛之、朝鮮高校のスケ番役の真木よう子、高校の先生役の光石研、ほかにキムラ緑子、前田吟、笹野高史(好演!)、ケンドーコバヤシ、オダギリジョー、余貴美子、大友康平など、すべての役者がそれぞれの見せ所を与えられ、ほんの数カットに過ぎなくとも印象に残る芝居をみせてくれる。
 一度井筒に使われた役者は、きっと次も出演したいと思うのではないか。

 いろいろ思うことはあるが、本作に関してはなんと言っても沢尻エリカの一本勝ちである。
 チマチョゴリを着た彼女の美しさには、国籍や人種や民族といったハードルを平気で飛び越えさせる力がある。
 この力ゆえに、日本の真面目な高校生が、よりにもよって朝鮮高校の番長の妹に一目惚れして一点突破(パッチギ)してしまうわけで、その力学が働かなければ物語は動きださない。
 沢尻エリカのたたずまいは、そこに十分な説得力を与えている。
 女優としてこれだけいい素材の持主なのだから、やっぱり復帰してほしいものだ。
 井筒監督の手によって再生されることを祈りたい。
 
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在日コリアンの少女を演じる沢尻エリカ 




おすすめ度 :★★★★

★★★★★
 もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★  面白い! お見事! 一食抜いても
★★★   読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★    いい退屈しのぎになった
     読み損、観て損、聴き損