2020年三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売
このシリーズを手に取るのもこれで5冊目。
書き手が20~30代の夢と野望あふれる若手ではなく、第一線で活躍するバリバリの40~50代でもなく、いくつかの業界で荒波をくぐって来て人生の酸いも甘いも知った60~70代の人間であることが、本シリーズのユーモアとペーソスまじりの渋い味わいを生んでいる。
それぞれの現場で、取引先との関係に苦慮しながら、舞い込んでくるクレームに追われ頭を下げながら、低賃金や時間外就労などの劣悪労働条件をぼやきながら、一歩引いた大人の目でもって業界と人間と自分自身とを観察しているあたりが、やっぱり「亀の甲より年の功」という気がする。
だから、それが3Kと呼ばれるような仕事であっても、派遣や非常勤であっても、悲壮な感じはしない。
伊波二郎によるヘタウマ感あるイラストがまた、本シリーズ人気の理由であろう。
ソルティは図書館で借りているが、どの本も予約待ちのことが多い。
今回の書き手は、団体旅行の添乗員を15年以上やっている60代後半の男。
映画制作、塾講師、フリーライターなどの世界を渡り歩いてきたという。
国内旅行、国外旅行、修学旅行、社員旅行、日帰りツアー、関連イベント手伝い等々、いろいろな現場で著者が見聞きした愉快なエピソード、旅行先で起こった様々な珍事やヒヤヒヤや思いがけない感動、委託元である旅行会社との気を遣うやり取り、楽しく読ませてもらった。
あらかじめスケジュールが決まって、時間と行く先が自由にならないというのが性に合わない。旅先では気分次第で動きたい。
それに、団体旅行は人気の高いスポットをめぐることが多いので、どこ行っても混雑する。これがまたストレスである。
国内国外問わず、圧倒的に閑散期をねらった一人旅が多かった。
しかるに、年をとったらそう言ってもばかりいられないかもしれない。
足腰が弱って、頭も働かなくなり、宿の予約や飛行機の手配など自分で段取り付けるのも億劫になり、加えて人恋しくなってくれば、団体旅行の便利さと賑やかさが好ましく思われてくるのかもしれない。
これまで添乗員さんの世話になることはなかったけれど、今後はあるかもしれない。
その時には旅の終わりに添乗員さんにあたたかいねぎらいの言葉の一つでもかけてあげよう。
コロナ禍で一年半以上の旅行自粛が続く中、添乗員の仕事も閑古鳥だったろう。
本作の印税が少しでも著者の生活の助けになっていればよいのだが。
(――って図書館で借りたお前が言うな!)
おすすめ度 :★★★
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損
★★★★★ もう最高! 読まなきゃ損、観なきゃ損、聴かなきゃ損
★★★★ 面白い! お見事! 一食抜いても
★★★ 読んでよかった、観てよかった、聴いてよかった
★★ いい退屈しのぎになった
★ 読み損、観て損、聴き損