手元のガイドブックによれば、この山は「体力、技術」の初級レベル。
 かかとの骨折後のリハビリにはちょうどいいと思い、ハイキング気分で出かけたのだが、とんだ誤算であった。
 山登りのしんどさは、山の高さではなく傾斜によって測るべし――という黄金律を叩きこまれていたはずなのに、ガイドブックの甘言にだまされた。1000mを超える山でも、ここより楽なところはいくらでもある。
 思いがけない急斜面にすっかり息が上がり、下山後に生じた骨折部の痛みと足の引きずりは、翌日の今も続いている。
 それでもやっぱり・・・・・山はいい。

登山日 2021年10月20日(水)
天気  晴れ、風やや強し
行程
09:00 JR越生線・越生駅
    歩行開始
09:25 越生神社
09:45 世界無名戦士の墓(15分stay)
10:15 西山高取(262m、15分stay)
11:00 高取山頂上(376m、10分stay)
11:30 幕岩展望台(295m、30分stay)
12:50 桂木観音(10分stay)
14:00 オーパークおごせ
    歩行終了
所要時間 5時間(歩行3時間30分+休憩・見物1時間30分)
最大標高差 310m


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JR越生駅
埼玉県入間郡越生町にあり、越生線と東武東上線が乗り入れている
 朝のこの時刻、降りたのは4~5名

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なんと、越生は江戸城を築いた戦国の武将太田道灌の生誕地なのであった。
 落語にもなっている有名な山吹の逸話もここ越生が舞台とか。
 
 狩りに出た道灌がにわか雨にあい、雨具を借りに一軒のあばら家を訪ねたところ、娘が山吹の枝を差し出した。
 七重八重 花は咲けども 山吹の みの一つだに なきぞ悲しき
という古歌にかけて雨具はないと断ったのだが、道灌にはそれが分からない。家来に解説されて、「余は歌道に暗い」と反省し、のちに立派な歌人になった。
(佐藤光房著『東京落語地図』、朝日新聞社刊より抜粋)

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 山吹の品種のうち、昔から日本に栽培されている八重ヤマブキが実を結ばない
「実」と雨具の「蓑」をかけた駄洒落であるが、
じつはこの故事、後世になって作られたらしい


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 越生神社
八幡神社、日吉神社、八坂神社、稲荷神社などいくつかの神社が合祀されている
祭神は大物主命、すなわちオオクニヌシノミコトである
登山の無事を祈る

 車道を一登りすると、世界無名戦士の墓に着く。
 白亜の屏風のようなデザインが目を惹く。
 この階段、高齢者は登るのが大変だろう。

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越生町の医師長谷部秀邦氏が発起人となって昭和30年(1955年)に落成
第二次世界大戦で亡くなった世界60余か国251万の兵士を慰霊・追悼している
 展望塔からの景色は「これを見るためだけでも来てよかった!」と思うほど

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 右端に白く光る西武球場ドーム(所沢)から、新宿・池袋の高層ビル群、
スカイツリー、さいたま副都心、左端におぼろに霞む筑波山(茨城)まで、
関東平野150度を見渡すことができた

 墓の横手から山道に入る。
 ここからが険しかった。

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 西山高取
 木のベンチで一服
 ここから尾根までまた急登続き

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 石灰岩の露頭
チョークの原料である

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 高取山頂上

 着いた!

 ガイドブックでは眺望が得られないとあったが、東面の木々が伐採されて、正面に筑波山が丸見えであった。
 今日は昼食を持参しなかった。栄養補助食品をパリパリ。

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 山頂を離れ、眺望の良いという幕岩展望台に寄り道。
 が、眺望自体は無名戦士の墓にかなわない。
 昼食をとるには絶好の場所。

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 ベンチで30分ほど昼寝する。
 形を変えながら流れる雲をボーっと見る。
 こういう時間が自分には必要なんだと、つくづく思う。

 四国遍路を思い出させる鈴(りん)が聴こえてくる。
 と、やおら木々の陰から男が出現。
 最近山登りを始めたという71歳。心筋梗塞をやって健康の大切さに目覚めたとか。
 本日山中で会ったのは中高年男性ばかり5名であった。
 
 さあ、あとは下るのみ。
 が、足に負担がかかるのも、転倒して負傷しやすいのも、登りでなく下りであることも山登りの常識。
 ステッキを使って注意深く下山。


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桂木観音

 養老3年(719年)、紫雲に曳かれて当地を訪れた行基上人が、観音のお告げを受けて山中の大杉を用いて彫像したという伝説がある。
 無人の寺だが立派な鐘楼があった。
 生きとし生ける者の幸せを念じながら、一回撞かせていただいた。

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観音が降り立った山

 携帯はところどころ圏外。
 都会のIT生活で電磁波の溜まった身体を、杉木立がデトックスしてくれる。
 鳥のさえずりを耳に、馬の背を吹き抜ける秋風に身をまかせれば、ネット空間の浮薄さが募るばかり。
 真のリアリティは秋の里山にある。

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左右が崖となっている馬の背

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 昨今のグランピング&キャンプ流行を受けて開設された。
 もちろん、日帰り入浴もできる。
 岩露天風呂にゆっくり浸かって、足をもみほぐした。
 缶ビールとスナックを買い、リラックスエリアでくつろぐ。
 
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窓からの景色
紅葉時はきれいであろう

 無料送迎バスで越生駅に戻る。
 駅前広場には太田道灌の像が建っていた。

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大河ドラマ主演を狙っている
演じるとしたら誰かな?

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 越生駅のホームからすでに世界無名戦士の墓が見えていたのに気づく。
 “無名”とは、亡くなった兵士の名前が分からないという意味ではなくて、「位階を超越し、一切無名平等にお祀りする」という意味からの命名。
 すばらしい見識だが、やっぱり戦士の墓がないのに越したことはない。
 彼らは故郷の家族のもとに帰れなかったから、ここにいるのだ。
 
 七重八重 花は散れども 山吹の 身の一つだに なきぞ悲しき


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